2021年12月29日水曜日

PCR陰性であっても公共交通機関が利用できない

海外からの帰国者は、帰国後に隔離場所や自宅に移動する際に公共交通機関を使うことが禁止されている。オミクロンの濃厚接触者となった受験生も会場へ公共交通機関を使わないで行くのが受験の条件である。

両方ともにPCRで陰性であってもこのように指示されているのが理解不能の対策である。


まず、この対策を立案した人は公共交通機関で感染が起こることを想定している。もし、その可能性があるのであれば、感染が拡大している時に、満員の通勤列車やバスは極めて危険であり、過密状態を避けるための対策が必要なはずだ。

もうひとつは、PCR陰性であっても他人を感染させる可能性があると考える理由がわからない。PCR検査のエラーは稀なので理解できない。
検査の前日に隔離場所で感染した場合があるがウイルスはすぐには増えない。

2021年12月28日火曜日

Omicronの感染対策を考える

コロナの感染対策は状況によって臨機応変に変えていかなければならない。対策は国によっても異なる。毎回の感染波で拡大するウイルスの性質の違いを元にして考える必要がある。

ワクチン接種をした人の割合と年齢分布と接種のスピードも考慮しなければならない。また、ワクチンの種類によっても効果が異なる。
 

デルタ、オミクロンについてわかっているのは、ワクチンを2回接種しても感染して他人に感染させることを防止できない、つまり感染防止効果は弱いことである。つまり、ワクチンパスポートの感染予防の有効性は疑わしい。 3回目のブースター接種をすれば、抗体量はかなり上昇し、しばらくは感染予防効果が強いだろう。ワクチン接種後に抗体の産生は落ちてゆくが、どれだけの抗体量があれば感染防止の効果があるのかのデータはまだない。


しかし、感染しても
ワクチンは重症化を防ぐことができると考えられる。従って、デルタの感染時から、感染者が増えても死亡率はほとんどの国で以前と比べて大幅に低くなっている(下図)。オミクロン感染で重症化する率も低くなっている。これがオミクロンの性質によるのか、ワクチンの効果によるかはまだ断定できない。

後遺症についてもまだ判断できない。感染者の中の1-2割の人に後遺症があることが報告されている(感染して無症状であっても後遺症がある場合がある)。様々な後遺症は1年を経過しても改善が見られないという。ワクチン接種が後遺症にどのような影響があるかを知ることが重要である。


いずれにしても、感染重症化のハイリスクグループは、ワクチンを接種していない方、接種しても免疫が成立していない方である。日本のワクチン接種率が頭打ちになっており、全国民の80%にまでいっていないのが心配材料である。

これまでのように感染者数で対策を考えるのではなく、入院者数、重症数を基にして考えるべき時期に来ている。

新しい対策として、抗体がどれだけできているかの検査ができるようにするのが望ましい。オミクロンに対するワクチンを接種しても感染予防の効果がないのであれば、これまでのワクチンと変わらないことになるだろう。


                      欧州各国の人口あたりの感染者数(上)と死亡者数(下)。

2021年12月15日水曜日

Omicronの感染スピード

The Omicron variant advances at an incredible rateと英国で報道されている。

米国のCornell大学では、900人ものコロナ感染者が出てIthaca キャンパスを閉鎖しオンラインに移行したという。感染の多くはオミクロン変異だ。


Cornell大学では97%の学生がワクチンを2回接種していてブースター接種を終えている人もいる。学生は室内でマスクを着用している。

それでも急速に感染が広がったことから、オクロンの感染力はデルタよりかなり高いことがわかる。学生は若いので抗体産生は高いレベルにあると思われるが、ワクチンによるオミクロンの感染予防効果は低いと考えられる。

学内ではPCRテストを頻繁に行なっていたのに感染が広がったのは驚きである。重症化していないのはワクチンの効果によると思われる。

この事例から考えると、日本でクロンの感染が始まるとかなりのスピードで拡大すると思われる。重症化しないので大丈夫ではないかという主張があるが、ワクチンを接種していない人がどうなるかはわかっていない。また後遺症があるかもしばらくしないとわからない。

日本の国際空港での検査は感度が低い抗原テストなので、出国前のPCR検査時の後に感染した人を見つけ出すことができない。また、機内で感染する可能性は高いので、到着時とその3,6日後のPCR検査が重要である。感染後3日後からPCRで検出できる量のウイルスが増えてくる。しかし1週間以上の隔離は、隔離施設内での感染がなければ、意味がない。

しかし、すでに国内にオミクロンは侵入していると推測されるので、日本で感染が広がるのは時間の問題だろう。ワクチンを打てない人、打っても十分な免疫ができなかった人の感染を防ぐことが必要です。

 


2021年12月10日金曜日

Omicron

Omicron変異コロナウイルスについていろいろなことが言われていますが、確定的な事実はまだありません。ある国で観察されたことが、日本でも起こるかはわかりません。デルタより感染力が強いのか(おそらく強い)、より重症化を引き起こすのか、後遺症はどうかなどについてです。

今のワクチンがどれだけ効くのかの報道も、まだ試験管内のデータですから人でどうなるかはわかりません。3回目のブースター接種を受ければ大丈夫という報道がありますが、それがいつまで有効かはわかりません。

言えることは、日本でも感染が起こるだろうが、今以上に恐れる必要はなく、来年はOmicronに対応したワクチンの接種が必要になることです。治療のための抗体カクテルも新しいのが必要です。

「オミクロンは空気感染する」という新聞の見出しがありましたが、新型コロナは当初からエアロゾルによる空気感染で広がっており、ホテルの隣の部屋の人が廊下で感染した例、ショッピングモールですれ違っただけで感染した例などはデルタでも報告されていました。機内での感染が起きた報告も以前からありました。

もうひとつ困るのが、新型コロナが普通の風邪ウイルスになったのではないかという考えです。これもまだ根拠がありません。

2021年11月21日日曜日

いま日本のコロナが収束している理由

 

欧州で感染者が急増しています。日本、フランス、英国、ドイツ、米国のワクチン接種進行の上の曲線を見るとなぜ日本だけが感染を抑えられているかがわかります。

日本以外の国では接種率が60-70%ほどで減速し頭打ちになっていますが、日本は上昇を続けています。ある数理モデルによるとデルタ変異の場合、全国民の80%以上がワクチンを接種しないと集団免疫は達成できません。日本はそれに近づいているが他の国はまだそれを達成できそうにないです。

他の国でワクチン接種が進まないのは政治的背景があるからです。米国ではトランプ支持者が多い州ほど反ワクチン派が多くて接種が進んでいない。ドイツでは右派・極右政党のAfD支持が強い州ほど反ワクチン派が多い。一方、日本では同調圧が強いのが影響しているのでしょうか。

日本は接種の開始が他の国より随分と遅れて5月ころであるが他の国は2月には始まっています。日本のワクチン接種は短い期間に集中的に進んだ結果、今のところ感染が抑えられているのです。しかし、これは不幸中(第5波)の幸いであり一時的な安心です。

英国では行動制限を解除したことで感染が広がっています。日本は全員のマスクの着用を含めた対策が継続しているのも効いています。


ワクチンの感染予防効果は接種後3ヶ月後から徐々に減少し始めます。日本以外の国では接種が早く始まったので、その減少が始まりました。日本はこれからです。おそらく1月には次の波が出てくるでしょう。

 

今のうちに整えなければならないのは、PCR検査体制の拡充と病床の確保です。ワクチンで重症化は防がれており、抗体カクテルなどの治療薬が使えるので、8月にあった自宅待機(放置)の状況がなければ、マスク着用と換気に気をつければ、以前のような厳重な規制は必要がないと思われます。そして3回目のブースター接種の効率的な実施です。

体温測定と手指の消毒をすれば感染予防になるという誤った考えがいまだに蔓延していて、エアロゾルによる空気感染の対策に目がいっていない状況を一刻も打開する必要があります。

ただ未解決の問題は後遺症です。後遺症は感染者の中の一部で現れ、広範な病状があること、恢復するかがわかっていません。感染して無症状であっても後遺症があるというデータは恐ろしいです。ワクチン接種によっても後遺症を抑えることはできないようです。

欧州諸国の昨年からの感染者数(上)、死亡者数(した)の人口あたりの変化です。今年の夏以降、死亡者が少なくなっていることがわかります。一方、昨年の第1波で死亡率がいかに高かったかがわかります。

2021年11月7日日曜日

paul kleeと天使


 いつの頃からかクレーの絵画が好きだった。2006年にスイスを訪ねる機会があった時に、ベルンに前年にオープンしたばかりのパウル・クレー・センターに行くことができた。美術館の建物は素晴らしく、じっくりとクレーの絵を観ることができた。

思想家のヴァルター・ベンヤミンが1921年にクレーの版画絵「新しい天使」を購入し、自分の部屋に掲げていて、それについての文章を書いていたという話を聴いて、クレーのことを詳しく知りたいと思った。

午前中、図書館でパウル・クレーについての書籍を10冊ほど斜め読みした。

新たに知って印象的だったのは、彼はミュンヘンの青騎士の前衛芸樹家グループに加わっていてカンディンスキーらとの交わりがあったこと。デュッセルドルフの美術学校の教授になったが、ナチスに頽廃芸術家と見なされていたため追放させられスイスに戻ったこと。さまざまな天使の鉛筆画をたくさん描いていたことである。クレーはバイオリンも得意で、モーツアルト、バッハの音楽をモチーフにした絵の作品も多い。青騎士には現代音楽作曲家のシェーンベルグも加わっていたことにも興味をもった。

クレーの絵のどこに惹かれるのだろうか。表現方法が考え抜かれていて絵がシンプルであり、心に安らぎを与えてくれるからだろうか。



 

2021年11月6日土曜日

入国制限緩和かと思ったら

 11月8日からビジネスのための入国の場合は隔離を3日にするというニュースは朗報かと思ったら悲報だった。

事前に6文書の提出が必要であり、会社の責任者が出迎えからすべてを管理しなければならない。例えば移動は座席が指定できる交通手段しかだめでとか細かい。要するに海外から来た人を感染者として扱っている。普通に行動してもらって3日おきにPCR検査すれば良いのではないか。

 留学生についてもやたら複雑な手順が公表されて、やっと日本の大学で学べると期待した方ががっかりしている。


 

2021年10月19日火曜日

ワクチン接種済みでPCR陰性であれば日本に入国後、公共交通機関を使って帰れるようにしてほしい

このところの私のブログの記事は欧州に行きたいという話ばかりだ。いつになれば外国に行けるかと諸状況を眺めています。

現状は「行きはよいが帰りが怖い」ドイツへの入国はワクチン接種証明書だけでOKです。問題は帰国後の14日間のホテル隔離です。その隔離が感染対策上で意味があればよいのだが。14日間のホテル隔離中に発症した例はあるのだろうか。あるならば、その感染者を発見するにはPCR検査をいつ行えば良いかを考えればよい。


帰国時に空港でチェックインするときに、航空会社のスタッフが書類に問題がないかを念入りにチェックします。特に問題になるのがPCR検査の書類で、国指定の書式に指定された方法で搭乗の72時間内に行われた結果が書かれていないといけない。そのために何万円もかかる。

帰国すると書類の細かいチェック、複数のアプリ*のダウンロードと説明、PCR検査などの多数のブースを順番に周り3時間以上を要するという。

*使えない接触確認アプリのCOCOAもダウンロードさせられる。

この3時間にも及ぶチェックには多くの人手が必要で、担当者は英語も喋れないといけないだろう。しかし、それだけの手間と費用をかける意味はあるのかが疑問だ。

すべてが終れば入国できるが、書類が不備で送還された学生がいるというから怖い。だから航空会社は搭乗時に綿密にチェックする。

入国できたら荷物を受け取り隔離生活にはいる。東京近辺に自宅がない人は、自費で14日間ホテルに滞在しないといけない。帰国した留学中の息子を福岡の両親が車で迎えにいったという話を聞いたことがある。迎えがないとレンタカーを運転するか指定のハイヤーを予約しておく。

空港から公共交通機関を使って移動することを禁止しているのはなぜなのか?帰国前と到着後の2回のPCRで陰性であっても他人を感染させる可能性があるという判断がどのような科学的根拠によるのか理解できない。PCR検査をしていない無症状の感染者が乗車している可能性があるのに、PCR陰性とわかっている人がなぜ乗車できないのか?

もし、機内、あるいは到着後の手続き中に感染したのであれば、到着後の24時間内でウイルスが他人を感染させるほど増殖はしていない。公共交通機関を使って家まで帰るのは問題がない。

 
機内あるいは帰国後に感染した場合、PCRで検出できるほどウイルスが増殖するのを調べるには5日をおけばよいだろう。入国後の4日と7日後に調べればよい。1週間後に陰性であれば、自宅隔離を終了とする。ただ、厳密な隔離生活は必要ないと思う。


一時、日本の入国の空港での検査は抗原テストだったが、その時は多くの感染者がフリーで入国したはずだ。

入国後の対応は帰国者に対する差別、偏見があるとしか考えられない。ワクチンを接種していてPCR陰性であれば入国を認めてよいと思う。入国後は外出時にN95/KF94のマスクの着用を義務づければ普通に生活してよい。

日本の大学に入学することになっている留学生の入国を認めないのも理由がわからない。


ふと発見。Singapore Airlineで福岡-シンガポール-フランクフルトと飛べば、帰国時には福岡に着いて自宅で隔離できることに気がついた。時間はかかるがホテル代の節約ができる。

2021年10月13日水曜日

ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団

オランダのロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団(RCO)の創立125周年を記念して2013年にワールドツアーを行った時の記録映画がとてもあたたかく、感動的だった。

ブエノス・アイレス、ヨハネスブルク、ペテルスブルクを演奏旅行したときの映像であるが、どの都市でもクラシック音楽を愛する人々のドラマがあった。

ブエノス・アイレスでは、コンサートに来ることができなかったチョコレートショップの店員のために二人の団員が店で演奏をするシーンがあった。音楽が癒しであると話をしたタクシードライバーの方も印象的だった。ヨハネスブルクでは
黒人の教師にバイオリンを習う子供たちがいた。団員が普段着で演奏したコンサートは楽しいものだった。

演奏ホールにひとりの団員がいて語るシーンもよかった。コントラバス奏者が楽団に入って初めて演奏したショスタコーヴィッチの交響曲10番について旋律を演奏しながら語った。コントラバスが奏でるこの曲の不気味な旋律には、スターリンの圧政下で怯えて、いつでも逃げられるようにスーツケースを準備していたショスタコーヴィッチの体験が込められていると、
芸術は権力に勝つのだと話をした。

ペテルスブルク公演では、マーラーの交響曲2番「復活」が演奏されたが、一人の年配の男性へのインタビューがまずあった。昔、彼の祖母はマーラー自身が指揮したペテルブルクでの演奏を聴いてマーラーのファンになったという。彼がまだ子供だったスターリンの時代、夜中の2時に踏み込んできた秘密警察に彼の父親が連行された。彼はカザフスタンのスターリンの強制収容所に送られ、その後、15歳のときに、ドイツのハルツ山地の近くのヒトラーの強制収容所に移されたが、生還した人だった。亡命生活の後に祖国に戻り、祖母が愛したマーラーの「千人の交響曲(第8番)」を聴いて胸が震えたという。彼は最愛の奧さんと52年連れ添ったが「私一人が残された、つらいね、だがそれが私の人生」だと語った。

その方が「復活」が演奏されたホールの席にいて、曲が最高の盛り上がりをもって終わったとき彼の頬には一筋の涙が流れていた。

音楽は慰めと生きる喜びをわたしたちに与えてくれる。

 

ペテルスブルグ エルミタージュ美術館の前の宮殿広場  


コロナで旅行にもコンサートにも行けない日々、わたしはベルリンフィルのdigital concert hallで励まされていた。

2021年10月12日火曜日

Aperol Spriz

今から10年ほど前、イタリアのヴェローナの古代の円形劇場のそばにあったカフェのテラス席に座った時、周囲の人が鮮やかなオレンジ色の飲み物を飲んでいるのを見て、あれを下さいと注文して飲んだのがスピリッツとの初めての出会いだった。

オレンジとハーブのリキュールのアペロールをソーダ水とプロセッコ(イタリアのスパークリングワイン)で割ったカクテルが
スピリッツです。スピリッツはイタリアからヨーロッパ中に広まったようだ。最後に飲んだのはドイツの河辺のテラス席だった。

これまで日本でアペロールスピリッツを飲んだことはなかった。ところが、今日、いつも行くスーパーの棚に、アペロールとプロセッコが並んでるのを発見した*。


手にとってみたが買わなかった。やはり、カラッとした夏のヨーロッパのカフェのテラス席で飲みたかったから。それがいつ叶うかがわからないとしても。


*  3週間後に行ってもまだ売れていなかった。新しいものが売れるには何かきっかけが必要なのだろう。

* Sprizについて書いた記事を見つけました。

2021年10月10日日曜日

新型コロナは高血糖を引き起こす

新型コロナウイルスSARS-CoV2がこれからどうなるかを皆が案じている。現行のワクチンの効果が低下し、さらに深刻な病状を引く起こす変異が生じる可能性もある。 望ましい可能性として、COVID-19は季節性の普通の風邪ウイルスになると予言する人がいる。しかし、SARS-CoV2は風邪ウイルスではないので、その予言は当たらないだろう。

SARS-CoV2ウイルスは、ACE2というタンパク質を侵入の手掛かりとしている。ACE2は肺の細胞だけでなく多くの種類の細胞で発現している。脂肪細胞にウイルスが侵入すると、脂肪細胞を制御をしている分子が阻害され、インシュリンによる血糖レベルの調節ができなくなり高血糖になる。(ただし、脂肪細胞のACE2の発現はそれほど高くないのは謎である。)肥満、糖尿病の人がCOVID-19のハイリスクグループである理由はここにある。

肥満でない人も感染によって高血糖になることがあるという。そしてコロナから恢復しても糖尿病を発症することもある。

SARS-CoV2は、脳細胞にも損傷を与え脳の機能に後遺症をもたらすことも知られている。このように多様な影響を与える SARS-CoV2が、呼吸器だけの風邪ウイルスになるとは考えられない。 



Hyperglycemia in acute COVID-19 is characterized by insulin resistance and adipose tissue infectivity by SARS-CoV-2


Cell Metabolism
Available online 16 September 2021


 

 

*感染して入院している人を調べたら多くの人の血糖レベルが高かったので糖尿病の人が感染のリスクグループであるという記事があったが、感染によって糖尿病になることが考慮されていない可能性がある。

2021年10月8日金曜日

新型コロナウイルス対策のための換気システムの見直し

COVID-19の有効な感染対策は適切なマスクの使用と効率的な換気です。飲食店においても効率的な換気が最も重要です。アクリル板の設置は空気の流れを妨げるのでマイナスの効果しかありません。

多くの人が集まる場所の換気システムを見直し更新している国があります。

シンガポールのチャンギ国際空港は空調設備を新しくしたそうです。循環する空気はMERV-14フィルターを通した後にUV-C(遺伝子のDNA, RNAの吸収波長である260 nm近辺の紫外線)照射をしてウイルスを除去します。さらに、人が多い場所にはHEPA(High-Efficiency Particulate Air)フィルターを装着した空気清浄器を設置しています。CO2は500 ppm以下に抑えられているそうです。500 ppm以下という数値はすばらしいです。

ウイルス粒子を除去できるHEPAフィルターとウイルスを不活性化できるUV照射を通す換気システムが、今後の空調の標準になると思います。英国の病院の現場でその効果が確認されています。

 

飲食店で必要なのは、CO2モニター(NDIR方式)を複数台設置して、600 ppm以下になるように換気することです(500 ppm以下にするのは難しいでしょう)。グループの人数制限をするのも有効でしょう。多人数が大声で談笑すると多量のエアロゾルが放出されるからです。他の接触感染、飛沫感染を恐れた対策のほとんどは不要です。飲食にそのものによって感染することはありません。

2021年9月23日木曜日

ポルトガルのクロワッサン



初めてリスボンへ行ったとき滞在していたベレンの簡素なホテルには朝食がなかったので隣にあるパン屋さんで飲み物とパンのセットを食べていた。パンを選んでハムとチーズを挟んでくれる。偶然選んだパンが美味しくて毎日食べていた。

宿泊していたホテルが歴史的に有名な場所にあることに気がついたのは着いて数日後だった。エッグタルトの発祥店で、いつも観光客が並ぶPastéis de Belémはすぐ隣で、その向こうにジェロニモス修道院があることがわかったのは、撮った写真を知人に送ってPastéis de Belémの創業年1837の数字が歩道の石畳にあるのを教えてもらった時だった。


2度目の滞在で、リスボンのアパートメントに住んでいたときは、いつもその黄色のパンをパン屋さんかスーパーで買って来て食べていて、ドイツに戻る時には買い込んでいた。

そのパンの正体がしばらくわからなかったが、昨夜「ポルトガル・パン」で画像検索して見つけた。クロワッサンだったのだ。フランスのクロワッサンとはまったく別物で、しっとりしていて甘く黄色なのでクロワッサンとは思わなかった。三日月の形とは違う。

ポルトガル語のレシピを見つけて和訳して焼いてみたが、まだホンモノには近づけない。

2021年9月13日月曜日

入口の体温測定でコロナ感染者を見つけることはできない

新型コロナウイルスに感染した人の半数以上は無症状で発熱しません。 さらに発症する場合でも、発症前から他人を感染させるウイルスが増えています。 そして、感染の多くはこのような無症状の感染者から起きていることがわかっています。一方、入院が必要であった感染者を調べて高熱があったのは30%であったという報告があります。従って、発熱でコロナ感染者を効率よく見つけることはできないのです。発熱があってもコロナによるとは限りません。

加えて、平常体温は人によって異なり、時間、運動の後かどうかなどによって変化します。日本人では平熱が35度台、37度台の方もいます。欧米では37度台が多数です。さらに、顔面の非接触体温計でどれだけ正確に体温測定ができるのかも問題です。ある500人の測定例では、80%の人が実際より低い値でした。自分で決まった時間に接触型体温計で体幹の温度を測定し、自己管理することが大切です。最近のスマートウオッチには体温測定機能がありますので常時モニターできます。


なぜ体温測定がどこでも行われているのかといえば、それをすることによって偽りの安心感を得ようとしているからとしか言えません。どこでもやっているので、やらないと感染対策をしていないように思われるからでしょう。いたるところでやっているので無意味であるとは言えなくなっているのかも知れません。

2021年9月11日土曜日

『白貂を抱く貴婦人』


2018年のドイツ滞在中に学会に参加するために10年ぶりにポーランドの古都クラクフを訪れた。学会が終わって、レオナルド・ダ・ヴィンチの『白貂を抱く貴婦人』をもう一度、観たいと思って調べてみたら、旧市街の外のクラクフ国立美術館に展示されていた。行ってみるとこの絵を見るためには別料金が必要だった。暗い一室に特別に展示されていて多くの人がいた。

2000年に初めてクラクフに行った時、この絵はチャルトリスキ美術館に展示されていた。その美術館は旧市街の古い建物で、中は狭くてダビンチの作品は普通に並べてあって人もほとんどいなかった。

さて、国立美術館で他の絵を観ていたら懐かしい絵画があった。院生時代、1979年に東京にいた時に「ポーランド国宝絵画展」に出かけた時に一枚の絵葉書を買ってそれ今も持っている。パンタレモン・スジィンドラの「湯浴みをする少女」だった。しかし、その名前で検索してもその画家が出てこない。日本では知られていないようだ。そこで、絵葉書に書いてあった1846-1905という年代で検索して、ポーランドの画家、Pantaleon SZYNDLER のBathing girl, 1885であることがわかった。その絵に42年ぶりに会うことができた。

2018年にダ・ヴィンチの絵が国立美術館にあったのは、チャルトリスキ美術館の改装工事のためだった。10年の工事が終わり2019年に戻ってきたそうだ。今、見るためには予約が必要だという。

1枚の絵画でも、どのような時にどこで観たかによって記憶される思い出が違ってくる。

2021年9月10日金曜日

『リスボンに誘われて』『芋煮会』とか


💫
小説の『リスボンへの夜行列車』を映画化した『リスボンに誘われて』Night Train to Lisbon (2013)を観ました。リスボンがでてきて懐かしかったです。ポルトガルの独裁政権の時代の抵抗運動に関わった若者たちの過去を辿った硬派の作品。話はスイスのベルンから始まるが、ベルンの川と橋も歩いたことがある場所だった。

アントニオ・タブッキ 須賀敦子訳「供述によるとペレイラは」を思い出した。

リスボンの出てきた場所はどこだろうと探していたら、マニアックな人がいてGoogle Mapのストリートビューなどを駆使してすべて調べ上げたサイトがあった。

しかしその人も見つけられなかった場所があって、コメントした人がその場所を見つけて追加されていた。ひとつはリスボンではなく近くのシントラの教会、ポスターに使われていた駅はアムステルダム中央駅だった。


💫 アマゾンプライムで観ていた「世界の車窓から」に、ドイツのICE(新幹線)が出てきて乗客がランチを食べるところで、簡単なサンドイッチとブドウとリンゴがそのまま出てきてドイツだなあと思った。編み物をしてる人もいた。



💫 山形県知事は「芋煮会を自粛するよう」に求めた。家族単位や4人以下は容認するという。芋煮会!なつかしい。

仙台に行って初めて知った東北地方のお花見と同格の行事である。大学の研究室とかサークルとかいろんな集まりで、山や河川敷に行って大きな鍋で芋煮を作って食べる秋の恒例行事であった。ローカルな行事として昔から続いているのがおもしろい。


💫 感染時に無症状であっても、血栓、心臓の障害、呼吸困難や頭がぼんやりした病状を訴える人がいることがわかってきた。後遺症の症状を訴える人の3割は無症状だったという報告がある。これは子供でも一定数いるという。これまで、このような人を調べることが少なかったのでわからなかったのである。

💫 キューバではなんと2歳以上の子供に新型コロナワクチン接種を始めたそうだ。ワクチンは自国製である。日本は12才以上だけになっている。他の多くの国でも子供に対する接種には慎重な意見が多い。日本はノ
バックスのワクチンを購入するそうだが、これは従来のタンパク質のワクチンだから副作用は少なく、12才以下の子供にも接種できるかもしれない。



2021年9月9日木曜日

住む場所で生死が分かれる

東京都の墨田区は第5波の8月における死者、重症者がゼロだったという。

これは墨田区の西塚至 保健所長が昨年から医療機関と話し合って医療体制を整えていたからである。更にワクチン接種を年齢の高い方から行いスピードも早かったことも効いているようだ。この保健所長が、国のコロナ対策のトップだったらと思う。

デルタ変異コロナウイルスの感染拡大とワクチン接種のスピードは時間の競争だった。国によるワクチンの確保と接種のスタートが、あと、ひと月早かったら第5波はこのように大きなピークにはならなかっただろう。オリンピックを開催するのであればワクチン接種を急がねばならないことは誰にもわかっていたはずだ。

コロナ対策は国によっても異なっている。中国は地域封鎖と全員のPCR検査と隔離によって感染の拡大を防いだ。台湾、ニュージーランド、オーストラリアは水際対策を厳格に行って感染拡大を防いだ。一方で、マスクもロックダウンもしないスウェーデンのやり方が話題になった。

日本は空港における対策が厳格ではなかった(抗原検査)ために、変異ウイルスの侵入を防ぐことができなかった。さらにPCR検査の拡充ができなかったことは致命的だった。

日本はこれまでに今後の医療体制を検討して整備する必要があったが、何の準備をしたのだろうか。サッカーチームの監督は負けが続いてその能力に疑問符がつくとすぐに更迭されるが、国のコロナ対策の責任者は5回失敗しても居座っている。 

県によっても状況は異なり、和歌山、島根、鳥取、広島は適切な判断ができた。

要するに、選挙で適切な為政者を選ばないと私たちの生死にも関わるということである。ドイツのメルケル首相はこのように国民が死んでゆくのは耐えられないと心から訴えました。日本の政治の責任者は国民の死を、自宅で医療も受けられずに孤独の内に死んだ方々を悲しんでいるのだろうか。

 

2021年9月3日金曜日

安心はできないが感染者数が下がってきた理由を考えてみた

 

複数の数理モデルの予測では8月の終わりに感染者数がピークアウトするとなっていたが、それがほぼ当たっているようです。

全国の感染者数はこの1週間ほど減少傾向にあります。PCR陽性率、1人の感染者から何人に感染が広がるかを示す「実効再生産数」の数値も下がってきています。その理由を考えてみました。感染者が減少してもすでに感染している人が恢復するまでに2週間はどを要しますので逼迫している医療状況はしばらく変わりません。死亡者数は増加しています。

感染者減少の理由のひとつはワクチン効果ではないかと思います。9月2日のワクチンの2回接種率は高齢者で87%、全体で 47%です。8月1日は、それぞれ72%と 27%でした。

次に学校、大学の夏休みによって子供たちと若い人の間の感染が抑えられたことです。最後に、8月に入って自宅療養者が急に増大し、感染し重症化しても病院の空きベッドがなくて治療を受けられないという恐怖感による自粛が広がったことです。この3重効果によって感染者数が低下してきたと思います。今後重要なのは、下がり切らない状態で緊急事態を解除すると再び次の波がやってくることです。
 

9月に入り夏休み効果が弱まることで減少のスピードが遅くなる可能性があります。家族内感染がおこると深刻です。子供の感染を防ぐことが重要です。

さらに、7月までにワクチン接種を終えた高齢者の免疫が徐々に低下してゆきますから、11-12月頃から高齢者の感染者が増えてくるでしょう。そうなると3回目のワクチン接種のスピードが問題です。免疫の低下速度は個人差があり、高齢になるほど早いです。3回目の接種後に免疫がどれだけ保たれるかはまだわかっていません。ただ、重症化を防ぐ免疫は長く保持されるようです。

2021年8月20日金曜日

有効な感染予防対策は何か?

デルタ変異コロナウイルスによる感染は全国的に深刻な状況になっています。危機的といってよい。いつピークアウトするかがわかりません。問題は、政府が有効な感染防止策を訴えることができないことです。接触感染でなく空気感染を恐れなさいというメッセージさえ語られたことがない。これまでのやりかたでは通用しないことは明らかである。

ワクチン2回接種が終わっていない人が特に要注意です。ワクチンの効果は9月末になって国民全体の50-60%が接種を終えることからおそらく徐々に見えてくると期待されます。つまりそれまではピークアウトしなくて、医療崩壊が全国的に広がってゆき、治療が受けられないで重症化して死亡する人が増え続けるというのがひとつの予想です。最悪の予想はさらに大きなピークが来るというものです。9月12日に緊急事態宣言が解除できる状況にはならない。

個人的には、行く場所で携帯用のCO2モニターで換気度をチェックして800ppm以上の場所は避けるのが有効だと思う。至る所にアクリル板、ビニールシートが設置されているが、感染防止に役立っていないばかりか、空気の流れの障壁になってむしろ感染のチャンスを増やしていると考えられる。アクリル板を設置していると、対策をしている安心感を与えるが偽りである

 

       人口あたりの7日平均感染者数をインドと比べてみた↓

 


 

2021年7月31日土曜日

ブレークスルー感染

ワクチン2回接種は高齢者で73%、全国民で 28%となりました(7月30日現在)。ファーザーのワクチンは、デルタウイルスに対しても感染予防効果があり、また感染しても重症化が防げますが、完全ではありません。2回接種率が60%を超えれば、感染予防効果が見えてきます。したがって、現在の日本の感染のほとんどは65歳以下の若い人で拡大しています。その結果、死亡者数は減少していますが、感染によって重症化するのは若い人でも変わりません(容体が急変する、恢復後も後遺症があるのも同様です)ので病床は逼迫しています。 


日本の問題点

1. PCR検査数が少ない。 フランスの1/15 英国の1/35 
2. 受け入れられる病床が少なく自宅待機となる。 
3. デルタの感染力を考えた対策がない。 
4. ワクチンは間に合わない。

首相は8月中に2回接種完了4割を目指すと述べたが、それでは今回の第5波の大きさにはほとんど影響がない。


ワクチンの効果の持続期間 感染予防と重症化予防

ワクチンの感染予防効果は88%ほどあると英国で報告されていた。しかし、ワクチン接種が先行しているイスラエルでは、発表される数値が低下してきて現在は60%と報告された。そして、高齢で疾患がある人の感染が増えている。すなわちワクチンの効果は半年後から徐々に低下していくと考えられる。低下のカーブは人によって異なる。

日本で、7月に接種を終えた高齢者が感染する可能性はしばらくは10%ほどであるが、来年になると50%ほどと低下してゆく。欧米では3回目のワクチン接種が議論されていおり、イスラエルは8月から高齢者の3回目接種を始める。


デルタコロナウイルスの脅威

毎回の感染の波は異なる変異ウイルスによっているが、デルタ変異ウイルスは極めて感染力が高い。先週、中国から公表された論文ではデルタ感染者が鼻孔に保有するウイルス量は従来株の場合の1000倍に上ることがわかった。これまでの感染対策では不十分であることは明らかである。人がいる場所では空気感染が起こりうる。医療仕様[N95(米国) FFP2(欧州) KF94(韓国)]のマスクの着用が必須である。

2021年7月17日土曜日

ワクチン接種の効果

コロナウイルスSARS-CoV-2のワクチンは、Pfizer–BioNTech, ModernaのmRNAワクチンの一人勝ちの状態です。残念ながら他社のワクチンでは変異ウイルスに対しての感染予防効果が低いです。日本ではワクチン接種のスタートが遅かったのですが、そのお陰でこの2種のワクチンのみで接種が行われました。

 購入していたAstraZenecaのワクチンを台湾、インドネシア、タイに供与していますが、デルタ変異ウイルスに対する効果は低くなります。


ワクチンの1回接種が国民全体の40%を超えれば感染者が抑えられてくるという伝聞情報を首相が述べています。それは厳格なロックダウンを行なっている状態で、アルファコロナウイルスによる感染が拡がっていた英国、フランス、ドイツの事例からの推測です。首相周辺から出てくる見通しはいつも甘く外れます。


今の日本の接触制限は緩く、感染力が強いデルタウイルスが拡がっている状態では異なります。デルタはワクチンを2回接種して2週間が経過しないと感染が防げません。

おそらく、2回接種が全国民の50%を超えないと感染は抑えられてこないでしょう。現在、日本は20%ですから、ワクチンの効果が出てくるのは秋になってからでしょう。

65歳以上の高齢者の2回接種率は55%となりました。したがって、今の感染は65歳以下の人で拡がるので死亡率は低くなるでしょう。しかし、死亡者が少ないから何もしなくてよいという意見は暴論です。
65歳以下の人も重症化しますので医療の対応が必須です。

これからの問題はワクチン接種をしない人の割合です。接種をためらっている人は接種後の死亡事例を心配していると思います。ワクチン接種後に死亡した例について国が詳細に説明をしないと納得されないでしょう。

 

 

2021年6月28日月曜日

「まさか入国後に陽性とは…」

 ウルグアイの五輪選手について「まさか入国後に陽性とは…」という新聞のタイトルがあったが、これは「まさか」でなく予想できたことです。ワクチンを接種しても、デルタ変異ウイルスに感染する可能性はワクチンの種類によって違い、中には感染予防率が30%ほどと効果が弱いのがあります。ウルグアイの選手はアストロゼネカのワクチンだった。

同行者に感染者がいれば、機内で離れて座っていても長時間のフライト中に感染した例はこれまでにも報告があります。機内で感染した場合は、到着時の抗原、PCR検査は陰性で、数日したら陽性となる。

ウルグアイの選手が乗ってきたカタール航空のフライトには、他に72人の乗客がいたというが、その人たちの検査はどうなっただろうか。


これまでも日本の空港での水際対策はザルでしたが、さらに緩い対策でオリンピックの入国者が増えてゆけば、東京の感染は悲惨な状況かもしれません。米国からの参加者は専用機で来日し最小の滞在日程とするそうだが、そのような対策をとれない国は多いでしょう。

問題は現在すでに増加傾向にあるデルタ変異ウイルスによる感染曲線にオリンピック効果が加重されると8月にどのような状況(京大の西浦先生の予測です)になるかです。

2月の時は、全国の感染者数が1,000人で緊急事態宣言を解除して2週間後に増加が始まったが、今回は1,500人で解除していてもう増加の傾向がある。

 デルタ変異の感染力の強さについては恐ろしい報告が続いています。また、ワクチン接種のスピードが少し遅くなっていることも悪い知らせです。1回接種が50%(これは独仏などのデータからの予測ですが、デルタがメインの場合は2回接種が50%ほどかもです)を越えないと感染予防の効果が見えてこないでしょう。 

日本はアセトラゼネカのワクチンを使っていなかったのが幸いした。このワクチンは、デルタ変異ウイルスに対する感染予防率が低いからです。

2021年6月7日月曜日

第5波について

感染者ゼロを目指さない日本のやり方では何回でも波がくることを国の責任者はなぜ理解できないのか?これまでの波では毎回、新しい変異ウイルスが主流になっている。

5月中旬から感染者数は下降しているが、緊急事態宣言の解除予定の6月20日にはまだ下がりきれないだろう。第3波の時は全国の感染者が1000人ほどまで下降して解除し、2週間も経たないで再上昇している。少なくとも全国で100人以下になるまで待つ必要があるが緊急事態宣言を延長しないとできない。

デルタ(インド型)変異が日本各地ですでに広がり始めている。アルファ変異より感染力が強いので感染のスピードがかなり早いと予想される。6月20日に緊急事態宣言が解除されてからデルタが増加してきて8月にピークが来るかもしれない。オリンピックの時期に重なる可能性がある。

 
その頃に日本のワクチン接種率が30%ほどになると期待されるのが、感染を抑える効果はまだない。高齢者は接種を終えているので大丈夫だが、65才以下の人を中心に感染が広がるだろう。その波がどれほどの高さになるかはわからない。

人の動きを抑制している状態でワクチン接種率が40%を越える頃から感染は徐々に低下してゆくと推測される。

ワクチンの効果が全くなくなる変異ウイルスが出現するのはまだ少し先だろう。それまでに、あらゆる変異ウイルスに対しても有効な万能ワクチンが開発されることが期待される。



 ワクチンの接種数(上)と感染者数(下)を比較するとワクチンの効果がわかる。共に人口比の数字。

2021年5月21日金曜日

フライト中、および隔離ホテル内で感染が起きたニュージーランドでの事例

CDCのEID Journalの報告がNewsweekで紹介されている。

昨年9月の事例で、多くの研究者が時間をかけて解析した結論であり信頼性が高いと思われる。


✨ フライトの乗客は少なく1列おきに座っていたが、一人の感染者の1列空いた前後の人が感染していた。感染者のウイルスの遺伝子配列を調べているので感染が起こったことは確かである。
 

前にインドから香港のフライトでも列を越えて感染が起こっていた例を紹介した。キャビンの空気は数分で全交換されていても、そしてマスクをしていても、また短時間のフライトでも感染が起こる。
 

隔離中のホテルで接触がない隣部屋の人の間で感染が生じていた。PCR検査のために医師が来た時に、開けたドア付近でサンプリングしている。感染者の部屋が廊下よりも気圧が高くなっており室内の空気が外に出て、続いて隣の部屋を開けた時に隣人が廊下の空気を吸い感染が生じたと、監視カメラの映像から推測されたという。

両室の排気あるいは排水のダクトがつながっていて、感染者の呼気のエアロゾルがダクトを通じて隣室に移動した可能性があるが、それを検討したかは書かれていない。
 

離れていても空気感染が起きるわけで、日本で感染の半分以上の経路不明のケースはこのように起きているかもしれない。

満員電車のなかにスーパーキャリアーが乗車していれば周囲で感染はおこるだろう。そこで感染した人はどこで感染したかわからない。

 

この報告は昨年の9月の事例なので感染力が強くなった変異ウイルスによるのではない。

 

ニュージーランド(Aotearoa)の水際対策が徹底していることがよくわかった。隔離の間のPCR検査では陰性だったが、市内に出てから陽性となった人がどこで感染したかを追跡した研究報告でした。

スーパーキャリアーがスーパースプレッダーである

 最新の論文から

Just 2% of SARS-CoV-2−positive individuals carry 90% of the virus circulating in communities    Qing Yang et al. PNAS May 25, 2021 118 (21)

アメリカの大学では全学生が毎週PCR検査しているところが多い。そこでわかったこと。無症状の感染者のすべてが感染力を持っているわけでなく、わずか2%の人が大学内で感染しているウイルスの90%を保持していることがわかった。それ以外の大多数の無症状の感染者はたぶん他人に感染させない。

 
つまり、
SARS-CoV-2の「スーパーキャリアー」が「スーパースプレッダー」になっているわけである。

どのような人が「スーパーキャリアー」になるかがわかれば、感染を防ぐことができる。
スーパーキャリアーは無症状のままだとするとその人の周囲が多数感染することになる。

 

2021年5月20日木曜日

インド変異コロナウイルイスによる第5波?

Pfizer/ BioNTechとModerna のワクチンはインドで流行している変異ウイルスに対しても有効であることがわかりました。 

日本の研究者も数日前にこの結果を発表しましたが、その1週間前に海外で3つの投稿論文が発表されていました。複数の研究で同じ結果が出ているので間違い無いと思われます。

 

そして、昨日、イギリス政府の諮問機関がインド型は英国型の1.5倍感染力が高いと発表しました。

日本でワクチン接種のスピードが今のままなら、多くの人が接種する前にインド型が猛威を振るうと思います。8, 9月頃でしょうか??オリンピックの後に大きな第5波が来ます。 

それを予測するには「現在のところ、面的な広がりはない」とか言ってないで、インド変異型のモニタリングが必要だ。同時に、インド型が増え始めたワクチン接種率が55%の英国の状況を注視することだ。

 
オリンピックをやめて、その間にワクチン接種のスピードを100倍速にすれば間に合うかもしれないのに。


 

2021年5月6日木曜日

世界のCovid-19感染の状況

 

 

COVID-19 Data Explorerはとても便利で世界各国のデータを異なる側面から見ることができる。上は大陸別の人口あたりの感染者データである。

北アメリカとヨーロッパは減少傾向にあるが、南アメリカは高止まりで、アジアは上昇中である。世界中で感染者が減少した後しばらくして、初めて世界の祭典であるオリンピックが開催できるのではないか。インドのように悲惨な状況を見ながらオリンピックを行うことはできない。同時に、日本国内での感染が終息していることが必要だ。この両方ともが満たされない中で、なぜ、オリンピックを強行しようとしているのか、その理由を知りたい。

NYTimes May 11, 2021

There are three main reasons: money, money and money.

2021年5月4日火曜日

「お札のウイルス1週間生存」西村大臣、手洗い呼びかけ

この記事を読んだ人は、やはりコロナは接触感染するのだと思うでしょう。

マスコミは誤っている言説をそのまま報道してはいけない。誤ったことを報道してしまうのは、この件について科学的な判断ができる人がマスコミの内部にいないからではないか。内部にいないなら複数の専門家に訊いてほしい。

さらに誤った報道をしたとわかった場合には訂正記事を出すべきである。 そのような対応を見たことがない。

そもそも政治家が証拠も述べないで恐怖心を煽ることが誤っている。政治家が感染対策について述べることには非科学的なことがあるので注意したほうがよい。日本では今の政治家に正しい感染対策を求めることができない。

 

 「新型コロナの感染経路は空気感染によるもので接触感染の可能性は少ない」というのがこれまでの論文、データから得られる結論である。米国のCDCの4月5日改訂の報告では、接触感染の可能性は、1万分の1以下という数字を書いている。


紙の上で
新型コロナウイルスがどれだけの間、感染力を持っているかを調べた論文は多くある。1日後にはほとんど無くなっているという論文が多い。問題はどのような方法で生存を確認したかである。RNAの存在だけを調べた研究もあるが、RNAが残っていても活性があるとは限らない。

もう一つは疫学的な視点である。もし、紙幣やコインがコロナの感染源になっているならば、それらに触れる機会が多い人に感染者が出るはずである。そのようは報告はないのではないか。
 

手洗いは推奨されるが、多くのデータから考えると接触感染による新型コロナ感染は非常に起こりにくいと考えられる。

ただし、幼児は接触感染がおきる可能性がある行動をいつもしている。 しかし、幼児は新型コロナに感染しても無症状か軽い症状であるという。もちろん例外はある。

2021年4月28日水曜日

新型コロナは空気(エアロゾル)感染を恐れなさい!

新型コロナの感染経路の誤解「意味がないコロナ感染対策をやめよう」の記事を書いてきたが以下の報道を読んでまた書いてみた。

「変異株は怖い…その場の人たちにあっという間に」 
クラスター発生のスナック経営者が猛威語る 茨城・日立市
東京新聞 2021年4月26日


この記事は、あらゆる防御策をやっていたが変異ウイルスによるクラスターが発生したと報じている。しかし、記事に書いてある防御策はあまり意味がないものばかりである。換気が良くない店で、無症状感染者がカラオケを歌い生じたエアロゾルを吸い込んだことにより感染が起こったと思われる。あるいは、客が大声で話してエアロゾルが生じたのかもしれない。

北海道の昼カラオケで、マスクをして歌っていたけれど大人数が変異体ウイルスに感染したという事例があったが、それと同様である。


歌を歌った時に発生するエアロゾル量を20とすると、大声で喋る時の量は5-10、息をしているときは2ほどだろう。この値は個人差があり、歌の歌詞によっても異なる。歌は時間が長いので発生するエアロゾルの総量が多くなる。


非接触型で使える体温計や消毒液なども設置していた

感染源となるのは無症状の感染者で発熱していないので体温を測定することの意味はない。熱があるのに飲みに来る人は排除できる。手の消毒をすることでどれだけ感染が防げるかはわからない。

接客をする女性従業員はマスクの上にフェースシールド

フェイスシールドをしていると防御している雰囲気を出せるが、感染予防の効果は小さい。マスクの材質と装着の仕方が問題である。マスクをしていると安心しているが、息をしていても、マスクをしていないときの10分の1ほどのエアロゾルが隙間から漏れ出ており、空気を吸い込む時もすべての空気がマスクを通過するのではなく、隙間からも空気を吸い込んでいる。

マスクを2重にするのは効果がある。不織布のマスクが勧められるが、N95・FFP2・KF94などの
医療用マスクをすることが最善の防御である。客がマスクの着用を拒否した場合は出て行ってもらうようにしておく。

飲み物はマスクをしたままストローで飲んでいたというが常時そうしたのだろうか。 マスクを外して黙って飲むのは問題ない。

全てのテーブルの中央にはパーテーションを設置

テーブルの上のアクリル板は、正面の人から出る飛沫、エアロゾルを防ぐことができるが、長時間のうちには
エアロゾルは部屋全体に漂うのでパーテーションの効果は低い。むしろ空気を停滞させていたのではないか?

手指はもちろん、床や壁まで消毒していた

新型コロナは接触感染しないので意味がない。床や壁にウイルスがいてそれが原因で感染することはない。ウイルスの活性保持時間は長くない。

店内には空気清浄機を設置

どのような性能の空気清浄機をどこに置いていたか? 部屋の全体の空気が循環していたかが問題である。飛行機はHEPAフィルターで客室の空気を3分で全量換気していると言われているが、それでも感染が起きている(下のインド発の
Vistara flightでの感染の記事参照)。加えてトイレの換気、消毒が重要です。


ドアも開放して換気も徹底していた


ドアをあけるだけでは換気されない。空気がどのように流れて換気されていたかが問題である。カラオケを歌うときはドアを開放できなかったのではないか? 換気はCO2モニターで700-800 ppm以下に抑えるのが良い。

接触通知システム

日本で接触アプリが有効であった例はどれほどあるだろうか。


ただ怖れるのではなく、正しい感染防御策を広めることをマスコミは心がけてほしい。東京新聞には上記のことを連絡したが返事はない。

新型コロナは空気感染し接触感染はほとんどしないという科学的事実がもっと広まってほしい。

Nature, Lancetに掲載された内容が正しいとは限らないが、この2誌は世界的に権威があると信じられている。新型コロナが空気感染するという論文は、この2誌にも掲載されており多くの引用論文がある。

 

 ✨ 新しい論文で、口腔の上皮細胞にコロナウイルスが感染し増殖できることがわかりました。これまでは唾液分泌細胞でウイルスが増殖できることが報告されていたが、気道に加えて、口の中から食道、たぶん鼻にいたる場所でウイルスが感染して増殖するわけです。その結果、味覚、嗅覚がなくなるという症状が説明できる。唾液をサンプルとしてPCRできることも支持している。無症状の感染者でも、口腔内でウイルスが増えており発声でエアロゾルが発生するのである。口腔内の唾液が感染源となることはもっと強調されてよいです。

参考論文 

Greenhalgh, T et al. Ten scientific reasons in support of airborne transmission of SARS-CoV-2. Lancet  April 15, 2021

Morawska L and Milton DK, It is time to address airborne transmission of coronavirus disease 2019 (COVID-19). Clinical Infect Dis. 2020; 71: 2311-2313

2021年4月24日土曜日

リヨンとインディオ

 

「本の都市リヨン」 宮下志郎 著 晶文社 1989

書籍を論文で引用するときには出版社と都市名を書くのが規則であるが、フランスのリヨンには昔、欧州のプリントセンターであった印刷街があったことを歴史的に考証した本で、ペスト、それに連なる宗教改革とユグノー歴史も書かれている。なぜこの本に辿り着いたかといえば、やはり森有正、高田博厚などのフランスものに繋がって見つけた本だ。

”それからも人々はペストと死という強迫観念につきまとわれ、根も葉もない噂に対して過剰に反応する過剰防衛気味になっていくのだ。そして次に流言蜚語が飛んだとき、それはフランス全土で大虐殺の悲劇を生むことになる。”

 



「インディオ社会史 アンデス植民地時代を生きた人々」          網野徹哉 著 みすず書房 2017

リスボンに行くようになって、ザビエルの宣教の旅に始まって、スペインがインカ帝国に侵略してゆく歴史と南アメリカの人種、少数民族に興味を持って、何冊か本を読んできた。この書物は、最終章の「謝辞と解題」から読み始めた。ペルーやスペインの図書館に保存されている古文書を読み解いて歴史を文章に組み立てゆくことから明らかになったインディオの社会史である。あらゆる文書を残しておくことの重要性を感じた。


この2冊に共通しているのは、日本人が他国の過去の歴史に興味を抱き、古文書を調べて読み解いてゆく楽しさである。このようなテーマに興味を抱いた研究者は世界中でも数少ない。わたしが長年行ってきた生物の研究者人生とはまったく異なった文系の研究者の人生に少し憧れる。 


2021年4月19日月曜日

インドで感染者急増 新しい2重変異コロナウイルスB.1.617

インドの友人の320日のメールでは、数週間前に感染者が落ち着いてきたので研究所は研究活動を全開にすると決めた直後にまた感染者が急増してきたとあった。インド行きが遠のいた!

 

増加は異常なほど急である。おそらく一番の原因は安心してマスクを外してしまったことだろう。これはB.1.617変異系統によるもので、E484QL452Rの2重変異を有している。インドで12月7日に見つかっていた*。この変異によって感染力が強くなっているようで、現行のワクチンの効果は弱いようです。インドではワクチン接種が全国民の10%ほどになっているが効果はないようだ。インドでは昨年9月をピークとする感染で抗体を有している人の割合が高いと思われたが、B.1.617変異系統には効果がないようだ。

 

この変異ウイルスはすでに世界各地に拡散し始めている。英国では2月に発見されている。ニュージーランドはインドからの入国をすべて禁止した。ニューデリーから香港に到着した飛行機で47人の感染者が到着後の12日間の隔離待機後に見つかっている**。416日の日本の空港検疫でインドから乗客7人の陽性者が確認されているが、この変異コロナに感染していたと予想される。

 

世界中で変異ウイルスが生まれており、私たちは警戒をしばらく緩めることはできない。オリンピックで世界中の人が日本に来れば、まさに変異コロナウイルスのオリンピックが日本で始まることになる***。

 

* インドも英国に倣ってSARS-CoV2の遺伝子配列の決定を積極的に行っている。この変異ウイルスが生じてから3ヶ月後に、人々が警戒を緩めたとたんに拡散を始めている。同様に集団の中に潜んでいる変異ウイルスが存在することを警戒する必要がある。日本は水際対策が甘いので、すでに各種の変異ウイルスが入り込んでいる。中でも注意すべきは現行のワクチンが効かない変異体である。新たなワクチンの開発状況も政府は把握してほしいのだが、、

 

** Vistara flight UK6395 飛行機の客室の空気は効率よく換気されていると言われているが、47人の多くは機内で感染したのだろう。座席表を見ると怖しい。全員がマスクをしていたと思われるがそれでも感染したのだろうか?感染者は横並びの席の場合が多いが、前後の席でも起こっている。搭乗時にどの席の何人が感染していたかを知りたい。いずれにせよ、この変異ウイルスの感染力が高くなっている。

 

*** ワシントンでの記者会見で、菅首相が、ロイターの記者のオリンピック開催できるのか?という質問を完全に無視して、日本の記者を指名するとは!質問を無視するのは日本ではいつもやっていたけど、海外ではありえない!

 

4/24 追加  インドの看護研修生がパリに着いてからバスでベルギーに移動したが43人中20名が感染していることが研修地でわかった。 スーパースプレッダーによる感染かもしれないと報道されているが、香港の事例からすると、2重変異ウイルスの感染力が強いことによると考えられる。パリについたフライトとバスの乗客を調べる必要があるが、すでにフランスで広がり始めたかもしれない。同様のことが世界中で生じているだろう。

2021年4月14日水曜日

できるだけ飛行機に乗らない

フランスは、鉄道で2時間半以内で移動できる都市間の飛行機の運行を禁止することにした。飛行機による二酸化炭素排出を考えてである。


具体的には、パリ-ボルドー、パリ-リヨン、パリ-ナント、パリ-レンヌ、リヨン-マルセイユの5区間でこれらは納得できる。

ただし、当初の制限時間は4時間だったが、航空業界などの反対で短くなったそうだ。日本だと東京ー大阪が新幹線でちょうど2時間半。

コメント:英国では無理だ。鉄道料金は高くて時間通りに走らない。

 

フランスの若い人と話していて、二酸化炭素排出の問題を考えて飛行にはできるだけ乗らないと言われたことがある。そのような考えを政府は実行したわけである。

2021年4月12日月曜日

「仮定の質問に答えるのは控えたい」「65歳以上へのワクチン接種始まる」

最近、政治家がこのように言うことが多い。政治家は、単に答えられない、答えたくないのであり、それは政治家として不誠実な態度であり、無能であることを示している。

そもそも仮定の質問こそが重要である。仮定の条件でどうなるかを予測して現在を考えるからである。

政治家はどのような質問に対しても答え、国民に説明する義務があると閣議決定してほしい。これは常識であるから。

記者が予め質問を提出しておいて、官僚書いた回答の文章を読むのは茶番でしかない。

話は逸れるが、日本の大学の博士号の公聴会の審査は甘すぎる。欧米では発表の後の質問は1時間以上もあり、内外の複数の審査員が質問する。その質問にいかにディフェンスできるかを審査するのである。仮定の質問に答えることができないなら失格だろう。


「65歳以上へのワクチン接種始まる」とニュースにあるが、届いたのは全市区町村の1割弱で、さらにその数がサンプル程度。福岡市に届いたのは975人分しかない。

医療関係者の接種が終わってから高齢者と思っていたらそうではなかった。医療関係者の接種が進んでいない。福岡県では来週までに届く分を含めても4分1にも達しない。

なぜ日本はワクチン接種をこれほどまで遅くしているのだろうか?

2021年3月30日火曜日

海外の国々を自由に旅行できるのは何年後だろうか?

ウィーンフィルが昨年来日してコンサートを行った。楽員は来日前から毎朝PCR検査していて、チャーターの飛行機に乗って来て、コンサート会場に行く以外はホテルからは出ないというやり方だっという。観客は半数だったか?それでも収支が問題ないということだろうか。

今回のサッカーの国際試合のために、日本は欧州のクラブの選手を数多く招集している。各国の選手をベルギーに集めて小型チャーター便で羽田に飛んでホテルの部屋に隔離して3日連続でPCR検査したという。これも、そこまでできる資金があるからだろう。

後日の報道によるとプライベートジェットで移動したのは全員ではなく数人、費用は3000万円という。


今年予約していた
ドイツでのコンサートが2つあったが共にキャンセルされ払い戻しを依頼した。一方のコンサートチケットは有効で、再指定できるとあったがキャンセルすることにした。ひとつは2年後、もう一つは3年後に延期される。

日本で昨年予定されていたコンサートがキャンセルになって今年開催する予定だったが、こんな状態ではできそうもないという話を聞いた。

ドイツでは長期的な見通しができたようだ。

来年はまだわからないが、再来年は自由に旅行できないかな?



2021年3月29日月曜日

意味がないコロナ感染対策をやめよう

🌟 ずっと疑問なのだが、建物などに入る時に体温を測るのは意味があるのだろうか。熱がある人は外出しないだろう。

 正確に測定できないことがある
 感染していても熱が出ていない人が多くいる
 平熱が高い人もいる


🌟 ホテルで隔離待機していた人が部屋を退出すると、業者が入って消毒が行われる。ひと部屋10万円とか?通常の拭き掃除でよい。ただしトイレは念入りに。心配であれば1-2日おいて次の人が入ればよい。


🌟 店で客が帰ると机や椅子などをエタノール消毒しているのも意味がない。園、学校などでも同様。通常の水拭き掃除でよい。

 🌟 アクリル板を設置すると対策が施されているという雰囲気がするが、大切なのは不織布マスクを正しく装着することと換気である。

🌟  いまだにフェイスシールドをしている人がいるが効果がない。

 

コロナウイルスは、エアロゾルによって空気感染するが、トイレでは接触感染が起こる可能性に注意すべきです。

新型コロナの感染者は腸にもウイルスが存在し、下痢を引き起こすことがあります。腸の上皮細胞にウイルスの侵入の手がかりとなるACE2が発現しているからです。また、無症状で何週間もウイルスが腸に存在しているケースが報告されています。

そこで、トイレのフラッシングにおける飛沫の発生にも注意すべきです。蓋をしてから流すことが必要です。さらにトイレ内での接触感染のリスクを考えるべき、トイレ使用後の手の洗浄が重要で、センサー付きの蛇口の使用が望ましいです。

2月2日の投稿「(6) 新型コロナの感染経路の誤解」に上記のことの理由が書いてあります。

2021年3月28日日曜日

文化大革命は何だったのか?

先日、中国の映画を見て文化大革命のことを思い出し、楊 継縄 Yang Jisheng著「文化大革命五十年」(岩波書店2019)を図書館で借りてきた読んだ。

プロレタリア文化大革命は1966年から1976年までの10年余の長い間続き、毛沢東の死が引き金となり終わった。ちょうど世界的な学生運動の時期と重なり毛沢東崇拝者が中国だけでなく世界中に現れた。しかし、
文化大革命の実態は権力闘争であって、そこに学ぶべき思想はなかった。

 
文化大革命の歴史的な研究は中国では公にできず、中国の公式の歴史から抹殺されようとしている。しかし、今の中国を考える上でも文化大革命の歴史的検証は重要だと思われる。

著者のYang Jishengは当局の圧力を受けており2015年に『炎黄春秋』誌から離任させられた。言論の自由が中国にはない。

思い出すのは、中国政府を批判し有罪となり、服役中にノーベル平和賞を受賞した劉暁波(1955-2017)のことである。彼が求めていたのは人間の自由である。本人がいない授賞式典で読まれた文章から。

憎しみは人類の知恵と良心を腐らせ、敵対意識は民族の精神を傷つけ、生きるか死ぬかの残酷な闘争を煽り、社会の寛容性と人間性を破壊し、1つの国家が自由と民主主義へと向かう道のりを阻むものだ。私は個人的な境遇を超越し、国家の発展と社会の変化を見据えて、最大の善意をもって政権からの敵意に向き合い、愛で憎しみを溶かしたい。

私は望んでいる。私の国が表現の自由がある場所となることを。全ての国民の発言が同等に扱われるようになることを。

そこでは異なる価値観、思想、信仰、政治的見解が互いに競い合い、平和的に共存できる。多数意見と少数意見が平等に保障され、特に権力者と異なる政治的見解も、十分に尊重され、保護される。ここではあらゆる政治的見解が太陽の光の下で民衆に選ばれ、全ての国民が何も恐れず、政治的意見を発表し、異なる見解によって迫害を受けたりしない。
 

 文化大革命の時代の粛清による死者の数は確定していないが夥しい数である。人間の間の憎悪がいかに恐ろしいものであるかを思った。

 文革後、改革開放政策により中国の経済は拡大したが、一部の人に富は集中し貧富の格差が拡大している。政治は一党独裁である。



2021年3月15日月曜日

ファノン フランス マグノリアの庭

あることを知ると次につながって、さらに別のことを知りたくなるということが複数絡まった日々を送っています。

Eテレの100分de名著でフランツ・ファノンが取り上げられていた。

フランツ・ファノン「黒い皮膚・白い仮面」 (みすず書房 1970)

大学生の時に購入したこの本を書棚から探し出してきて50年ぶりに読み始めた。昨年出た新装版は4070円だが昔は800円だった。Eテレの番組で解説をしていたのが小野正嗣さんで、やさしい眼差しで、的確に話をする方だと思った。この人が書いた「浦からマグノリアの庭で」という本をタイトルで選んで図書館で借りてきて読んだ。

浦とは、彼の出身地である大分の蒲江町の地名からきている。マグノリアは、パリ郊外のオルレアンで彼が住んでいた家の庭の樹木である。その庭は広くて、いろんな果樹が育っている。知り合いになった大学教授クロードとエレーヌの家にあるアパルトマンに小野正嗣さんは5年間住んでいた。

その先生と、加えて先生の交流関係にある多くの人との交わりに入れてもらうという恵まれた住まいと庭なのだ。先生は何とパティシエでもあり美味しいお菓子にもありつけるという。先生は難民も住まいに受け入れていて、その人たちとの交わりもある。

フランスに留学した方が書いたものをこれまで何冊か読んできたが、小野正嗣さんほどに人との出会いに恵まれた滞在は聞いたことがない。偶然の出会いによって豊かな交友が開かれていくのだが、その偶然を引き寄せたのは小野正嗣さんの人間性なのではないか。この本を読んでいて楽しかったのは小野正嗣さんが会って話をした多くの人のことである。小野正嗣さんがテレビの番組でファノンについて語る時、ファノンがフランス領のマルティニーク島で生まれた黒人であった状況を身近な感じで話すことができたのも、マグノリアの庭を介して同じような境遇にあった人々との出会いがあったからだろう。

 「フランスの作家の中には、学校や刑務所などに出向いて、読み書きのワークショップを行っている人たちがいる。ジャン=イヴもそのひとりであり、そうした経験を通じて、彼は「書く」という行為、そして「読む」という行為が、生徒たちや受刑者たちの心にもたらす喜びやポジティブな力を強く感じ取ってきた。」

これは以前読んだ「言葉と歩く日記」にあった、刑務所での演劇にも通じると思った。

「世界的な名声を確立した人が、80歳になってもまだ学びたいからと古典ギリシャ語の勉強をやり直す。難解で知られるマラルメの詩を理解しようと、ずっと年下のクロードの教えを請う。」

このような生き方をしたいと思った。