2021年3月15日月曜日

ファノン フランス マグノリアの庭

あることを知ると次につながって、さらに別のことを知りたくなるということが複数絡まった日々を送っています。

Eテレの100分de名著でフランツ・ファノンが取り上げられていた。

フランツ・ファノン「黒い皮膚・白い仮面」 (みすず書房 1970)

大学生の時に購入したこの本を書棚から探し出してきて50年ぶりに読み始めた。昨年出た新装版は4070円だが昔は800円だった。Eテレの番組で解説をしていたのが小野正嗣さんで、やさしい眼差しで、的確に話をする方だと思った。この人が書いた「浦からマグノリアの庭で」という本をタイトルで選んで図書館で借りてきて読んだ。

浦とは、彼の出身地である大分の蒲江町の地名からきている。マグノリアは、パリ郊外のオルレアンで彼が住んでいた家の庭の樹木である。その庭は広くて、いろんな果樹が育っている。知り合いになった大学教授クロードとエレーヌの家にあるアパルトマンに小野正嗣さんは5年間住んでいた。

その先生と、加えて先生の交流関係にある多くの人との交わりに入れてもらうという恵まれた住まいと庭なのだ。先生は何とパティシエでもあり美味しいお菓子にもありつけるという。先生は難民も住まいに受け入れていて、その人たちとの交わりもある。

フランスに留学した方が書いたものをこれまで何冊か読んできたが、小野正嗣さんほどに人との出会いに恵まれた滞在は聞いたことがない。偶然の出会いによって豊かな交友が開かれていくのだが、その偶然を引き寄せたのは小野正嗣さんの人間性なのではないか。この本を読んでいて楽しかったのは小野正嗣さんが会って話をした多くの人のことである。小野正嗣さんがテレビの番組でファノンについて語る時、ファノンがフランス領のマルティニーク島で生まれた黒人であった状況を身近な感じで話すことができたのも、マグノリアの庭を介して同じような境遇にあった人々との出会いがあったからだろう。

 「フランスの作家の中には、学校や刑務所などに出向いて、読み書きのワークショップを行っている人たちがいる。ジャン=イヴもそのひとりであり、そうした経験を通じて、彼は「書く」という行為、そして「読む」という行為が、生徒たちや受刑者たちの心にもたらす喜びやポジティブな力を強く感じ取ってきた。」

これは以前読んだ「言葉と歩く日記」にあった、刑務所での演劇にも通じると思った。

「世界的な名声を確立した人が、80歳になってもまだ学びたいからと古典ギリシャ語の勉強をやり直す。難解で知られるマラルメの詩を理解しようと、ずっと年下のクロードの教えを請う。」

このような生き方をしたいと思った。

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