2021年4月28日水曜日

新型コロナは空気(エアロゾル)感染を恐れなさい!

新型コロナの感染経路の誤解「意味がないコロナ感染対策をやめよう」の記事を書いてきたが以下の報道を読んでまた書いてみた。

「変異株は怖い…その場の人たちにあっという間に」 
クラスター発生のスナック経営者が猛威語る 茨城・日立市
東京新聞 2021年4月26日


この記事は、あらゆる防御策をやっていたが変異ウイルスによるクラスターが発生したと報じている。しかし、記事に書いてある防御策はあまり意味がないものばかりである。換気が良くない店で、無症状感染者がカラオケを歌い生じたエアロゾルを吸い込んだことにより感染が起こったと思われる。あるいは、客が大声で話してエアロゾルが生じたのかもしれない。

北海道の昼カラオケで、マスクをして歌っていたけれど大人数が変異体ウイルスに感染したという事例があったが、それと同様である。


歌を歌った時に発生するエアロゾル量を20とすると、大声で喋る時の量は5-10、息をしているときは2ほどだろう。この値は個人差があり、歌の歌詞によっても異なる。歌は時間が長いので発生するエアロゾルの総量が多くなる。


非接触型で使える体温計や消毒液なども設置していた

感染源となるのは無症状の感染者で発熱していないので体温を測定することの意味はない。熱があるのに飲みに来る人は排除できる。手の消毒をすることでどれだけ感染が防げるかはわからない。

接客をする女性従業員はマスクの上にフェースシールド

フェイスシールドをしていると防御している雰囲気を出せるが、感染予防の効果は小さい。マスクの材質と装着の仕方が問題である。マスクをしていると安心しているが、息をしていても、マスクをしていないときの10分の1ほどのエアロゾルが隙間から漏れ出ており、空気を吸い込む時もすべての空気がマスクを通過するのではなく、隙間からも空気を吸い込んでいる。

マスクを2重にするのは効果がある。不織布のマスクが勧められるが、N95・FFP2・KF94などの
医療用マスクをすることが最善の防御である。客がマスクの着用を拒否した場合は出て行ってもらうようにしておく。

飲み物はマスクをしたままストローで飲んでいたというが常時そうしたのだろうか。 マスクを外して黙って飲むのは問題ない。

全てのテーブルの中央にはパーテーションを設置

テーブルの上のアクリル板は、正面の人から出る飛沫、エアロゾルを防ぐことができるが、長時間のうちには
エアロゾルは部屋全体に漂うのでパーテーションの効果は低い。むしろ空気を停滞させていたのではないか?

手指はもちろん、床や壁まで消毒していた

新型コロナは接触感染しないので意味がない。床や壁にウイルスがいてそれが原因で感染することはない。ウイルスの活性保持時間は長くない。

店内には空気清浄機を設置

どのような性能の空気清浄機をどこに置いていたか? 部屋の全体の空気が循環していたかが問題である。飛行機はHEPAフィルターで客室の空気を3分で全量換気していると言われているが、それでも感染が起きている(下のインド発の
Vistara flightでの感染の記事参照)。加えてトイレの換気、消毒が重要です。


ドアも開放して換気も徹底していた


ドアをあけるだけでは換気されない。空気がどのように流れて換気されていたかが問題である。カラオケを歌うときはドアを開放できなかったのではないか? 換気はCO2モニターで700-800 ppm以下に抑えるのが良い。

接触通知システム

日本で接触アプリが有効であった例はどれほどあるだろうか。


ただ怖れるのではなく、正しい感染防御策を広めることをマスコミは心がけてほしい。東京新聞には上記のことを連絡したが返事はない。

新型コロナは空気感染し接触感染はほとんどしないという科学的事実がもっと広まってほしい。

Nature, Lancetに掲載された内容が正しいとは限らないが、この2誌は世界的に権威があると信じられている。新型コロナが空気感染するという論文は、この2誌にも掲載されており多くの引用論文がある。

 

 ✨ 新しい論文で、口腔の上皮細胞にコロナウイルスが感染し増殖できることがわかりました。これまでは唾液分泌細胞でウイルスが増殖できることが報告されていたが、気道に加えて、口の中から食道、たぶん鼻にいたる場所でウイルスが感染して増殖するわけです。その結果、味覚、嗅覚がなくなるという症状が説明できる。唾液をサンプルとしてPCRできることも支持している。無症状の感染者でも、口腔内でウイルスが増えており発声でエアロゾルが発生するのである。口腔内の唾液が感染源となることはもっと強調されてよいです。

参考論文 

Greenhalgh, T et al. Ten scientific reasons in support of airborne transmission of SARS-CoV-2. Lancet  April 15, 2021

Morawska L and Milton DK, It is time to address airborne transmission of coronavirus disease 2019 (COVID-19). Clinical Infect Dis. 2020; 71: 2311-2313

2021年4月24日土曜日

リヨンとインディオ

 

「本の都市リヨン」 宮下志郎 著 晶文社 1989

書籍を論文で引用するときには出版社と都市名を書くのが規則であるが、フランスのリヨンには昔、欧州のプリントセンターであった印刷街があったことを歴史的に考証した本で、ペスト、それに連なる宗教改革とユグノー歴史も書かれている。なぜこの本に辿り着いたかといえば、やはり森有正、高田博厚などのフランスものに繋がって見つけた本だ。

”それからも人々はペストと死という強迫観念につきまとわれ、根も葉もない噂に対して過剰に反応する過剰防衛気味になっていくのだ。そして次に流言蜚語が飛んだとき、それはフランス全土で大虐殺の悲劇を生むことになる。”

 



「インディオ社会史 アンデス植民地時代を生きた人々」          網野徹哉 著 みすず書房 2017

リスボンに行くようになって、ザビエルの宣教の旅に始まって、スペインがインカ帝国に侵略してゆく歴史と南アメリカの人種、少数民族に興味を持って、何冊か本を読んできた。この書物は、最終章の「謝辞と解題」から読み始めた。ペルーやスペインの図書館に保存されている古文書を読み解いて歴史を文章に組み立てゆくことから明らかになったインディオの社会史である。あらゆる文書を残しておくことの重要性を感じた。


この2冊に共通しているのは、日本人が他国の過去の歴史に興味を抱き、古文書を調べて読み解いてゆく楽しさである。このようなテーマに興味を抱いた研究者は世界中でも数少ない。わたしが長年行ってきた生物の研究者人生とはまったく異なった文系の研究者の人生に少し憧れる。 


2021年4月19日月曜日

インドで感染者急増 新しい2重変異コロナウイルスB.1.617

インドの友人の320日のメールでは、数週間前に感染者が落ち着いてきたので研究所は研究活動を全開にすると決めた直後にまた感染者が急増してきたとあった。インド行きが遠のいた!

 

増加は異常なほど急である。おそらく一番の原因は安心してマスクを外してしまったことだろう。これはB.1.617変異系統によるもので、E484QL452Rの2重変異を有している。インドで12月7日に見つかっていた*。この変異によって感染力が強くなっているようで、現行のワクチンの効果は弱いようです。インドではワクチン接種が全国民の10%ほどになっているが効果はないようだ。インドでは昨年9月をピークとする感染で抗体を有している人の割合が高いと思われたが、B.1.617変異系統には効果がないようだ。

 

この変異ウイルスはすでに世界各地に拡散し始めている。英国では2月に発見されている。ニュージーランドはインドからの入国をすべて禁止した。ニューデリーから香港に到着した飛行機で47人の感染者が到着後の12日間の隔離待機後に見つかっている**。416日の日本の空港検疫でインドから乗客7人の陽性者が確認されているが、この変異コロナに感染していたと予想される。

 

世界中で変異ウイルスが生まれており、私たちは警戒をしばらく緩めることはできない。オリンピックで世界中の人が日本に来れば、まさに変異コロナウイルスのオリンピックが日本で始まることになる***。

 

* インドも英国に倣ってSARS-CoV2の遺伝子配列の決定を積極的に行っている。この変異ウイルスが生じてから3ヶ月後に、人々が警戒を緩めたとたんに拡散を始めている。同様に集団の中に潜んでいる変異ウイルスが存在することを警戒する必要がある。日本は水際対策が甘いので、すでに各種の変異ウイルスが入り込んでいる。中でも注意すべきは現行のワクチンが効かない変異体である。新たなワクチンの開発状況も政府は把握してほしいのだが、、

 

** Vistara flight UK6395 飛行機の客室の空気は効率よく換気されていると言われているが、47人の多くは機内で感染したのだろう。座席表を見ると怖しい。全員がマスクをしていたと思われるがそれでも感染したのだろうか?感染者は横並びの席の場合が多いが、前後の席でも起こっている。搭乗時にどの席の何人が感染していたかを知りたい。いずれにせよ、この変異ウイルスの感染力が高くなっている。

 

*** ワシントンでの記者会見で、菅首相が、ロイターの記者のオリンピック開催できるのか?という質問を完全に無視して、日本の記者を指名するとは!質問を無視するのは日本ではいつもやっていたけど、海外ではありえない!

 

4/24 追加  インドの看護研修生がパリに着いてからバスでベルギーに移動したが43人中20名が感染していることが研修地でわかった。 スーパースプレッダーによる感染かもしれないと報道されているが、香港の事例からすると、2重変異ウイルスの感染力が強いことによると考えられる。パリについたフライトとバスの乗客を調べる必要があるが、すでにフランスで広がり始めたかもしれない。同様のことが世界中で生じているだろう。

2021年4月14日水曜日

できるだけ飛行機に乗らない

フランスは、鉄道で2時間半以内で移動できる都市間の飛行機の運行を禁止することにした。飛行機による二酸化炭素排出を考えてである。


具体的には、パリ-ボルドー、パリ-リヨン、パリ-ナント、パリ-レンヌ、リヨン-マルセイユの5区間でこれらは納得できる。

ただし、当初の制限時間は4時間だったが、航空業界などの反対で短くなったそうだ。日本だと東京ー大阪が新幹線でちょうど2時間半。

コメント:英国では無理だ。鉄道料金は高くて時間通りに走らない。

 

フランスの若い人と話していて、二酸化炭素排出の問題を考えて飛行にはできるだけ乗らないと言われたことがある。そのような考えを政府は実行したわけである。

2021年4月12日月曜日

「仮定の質問に答えるのは控えたい」「65歳以上へのワクチン接種始まる」

最近、政治家がこのように言うことが多い。政治家は、単に答えられない、答えたくないのであり、それは政治家として不誠実な態度であり、無能であることを示している。

そもそも仮定の質問こそが重要である。仮定の条件でどうなるかを予測して現在を考えるからである。

政治家はどのような質問に対しても答え、国民に説明する義務があると閣議決定してほしい。これは常識であるから。

記者が予め質問を提出しておいて、官僚書いた回答の文章を読むのは茶番でしかない。

話は逸れるが、日本の大学の博士号の公聴会の審査は甘すぎる。欧米では発表の後の質問は1時間以上もあり、内外の複数の審査員が質問する。その質問にいかにディフェンスできるかを審査するのである。仮定の質問に答えることができないなら失格だろう。


「65歳以上へのワクチン接種始まる」とニュースにあるが、届いたのは全市区町村の1割弱で、さらにその数がサンプル程度。福岡市に届いたのは975人分しかない。

医療関係者の接種が終わってから高齢者と思っていたらそうではなかった。医療関係者の接種が進んでいない。福岡県では来週までに届く分を含めても4分1にも達しない。

なぜ日本はワクチン接種をこれほどまで遅くしているのだろうか?