2021年4月24日土曜日

リヨンとインディオ

 

「本の都市リヨン」 宮下志郎 著 晶文社 1989

書籍を論文で引用するときには出版社と都市名を書くのが規則であるが、フランスのリヨンには昔、欧州のプリントセンターであった印刷街があったことを歴史的に考証した本で、ペスト、それに連なる宗教改革とユグノー歴史も書かれている。なぜこの本に辿り着いたかといえば、やはり森有正、高田博厚などのフランスものに繋がって見つけた本だ。

”それからも人々はペストと死という強迫観念につきまとわれ、根も葉もない噂に対して過剰に反応する過剰防衛気味になっていくのだ。そして次に流言蜚語が飛んだとき、それはフランス全土で大虐殺の悲劇を生むことになる。”

 



「インディオ社会史 アンデス植民地時代を生きた人々」          網野徹哉 著 みすず書房 2017

リスボンに行くようになって、ザビエルの宣教の旅に始まって、スペインがインカ帝国に侵略してゆく歴史と南アメリカの人種、少数民族に興味を持って、何冊か本を読んできた。この書物は、最終章の「謝辞と解題」から読み始めた。ペルーやスペインの図書館に保存されている古文書を読み解いて歴史を文章に組み立てゆくことから明らかになったインディオの社会史である。あらゆる文書を残しておくことの重要性を感じた。


この2冊に共通しているのは、日本人が他国の過去の歴史に興味を抱き、古文書を調べて読み解いてゆく楽しさである。このようなテーマに興味を抱いた研究者は世界中でも数少ない。わたしが長年行ってきた生物の研究者人生とはまったく異なった文系の研究者の人生に少し憧れる。 


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