2020年4月16日木曜日

ウイルス界における新型コロナウイルスSARS-CoV-2の活動報告  成長戦略の評価と我々の未来

我々ウイルスの生存戦略は「宿主をあまり殺さないようにしつつしぶとく増殖する」ことである。宿主を変えることも我々の成長戦略である。地球上での我々の歴史はどの生物より古く、生命の起源と進化に貢献してきた。我々は生物であるのか?そうではない。我々は生物の範疇には属さない独自の物体でもある。人間は、我々の定義に困り、生物と無生物の間にあるもの、不完全は生物などと呼ぶが、我々のごく一部しか知らない。我々は実に多勢で、多種多様であり生物進化において我々が果たしてきた役割を人間はまだ理解していない。

さて、今回、
SARS-CoV-2と命名いただいたコロナウイルスの人間界での新規の感染戦略はかなりの成果があった。なによりも、パンデミックとなったことが戦略の成功を示している。我々の先輩であったSARS, MERSの過去の失敗経験を参考にして、致死率をインフルエンザ並みに低くしたことだ。それによって、人間に新型コロナは恐れるには足らないという初期の誤算を与えることができた。実際は肺炎を超急速に進行できた。人間の遺伝的多様性を利用した新たな戦略がCOVID-19の成功を導いたのである。

 我々にとって一番重要なことは、どのような手段で感染を広げてゆくかである。これについても人間はなかなか私たちの戦略を知ることできなかった。感染しても病状を引き起こさないという新しい生き方によって、加速的に空気感染で感染を拡散し、いまや世界中を飛び回る飛行機に乗って世界中の国々に仲間を送り込むことに成功した。

我々は故意にコピーエラーを起こすことにより遺伝子配列を変異させて、短期間の間に適応的な進化を成し遂げることができる。人間はわたしたちの遺伝子配列を手当たり次第に解読できる能力をこの10年ほどに得ていた。しかし、たとえ配列を解読できても、変異によって我々の能力がいかに巧妙に変貌したかを人間は容易に捉えることはできていない。

人間の免疫システムをいかに欺くかが我々の長期生存戦略のポイントである。人間は我々の顔である遺伝子産物であるタンパク質の立体的な構造を予測能力を獲得して、効果的なワクチンの開発を試みている。しかし、我々は人間の予測を越えて変異していくであろう。「宿主をあまり殺さないようにしぶとく増殖する」ことが基本方針であるのはかわわらない。我々は人間界からすぐに消え去るつもりはない。たぶんこれから数年をかけて、人間を試みるつもりである。その後、我々は人間と共存する道を選ぶかもしれない。我々の故郷であるコウモリには、さらに新たな生存戦略を身につけた仲間が人間界に移ろうと目論んでいる。別に我々は人間を恨んでいるのではない。ただ、太古からの営みを続けているだけだ。

最後に重要なコメントがある。我々の中で
SARS-CoV-2のようにパンデミックを引き起こすのは極めて例外的な者である。我々のほとんどの仲間は平和的共存の路線を選択しているのである。

2020年4月15日水曜日

COVID-19との共生

COVID-19(SARS-CoV-2)の情報を追いかけてきました。これからどうなるかが大きな問題です。みなさんワクチンに希望を託していますが、ワクチンは上手くいかない可能性があります。まず、免疫が成立するかどうかです。一度感染した人が再度感染する例が報告されていて、免疫が成立しない人がいるかもしれません。次に免疫がどれだけ持続するかが問題です。ヒトに風邪を引き起こすコロナウイルスはすでに4種類知られていますが有効なワクチンはありません。さらに、COVID-19はすでに3つのタイプに変異していますので毎年有効なワクチンが用意できるかが問題です。集団免疫の成立が無理であれば、ヒトはCOVID-19としばらく共生を続けることになりますね。

今回の問題は、緊急事態宣言出されたが、その具体的なやり方、クローズする範囲を決めて訴えるために1週間ほど要している点である。なぜ、事前に決めておいて直ちに訴えることができなかったのか。医療崩壊を引き起こさない方策も事前に調査、検討して具体案を立案しておくことができた筈である。東京都と政府の協議も事前に行うことができた。1月から2月の間にこれらの問題に対処するグループを立ち上げてやっておくことができたのではないか。さらに、数理モデルに関する複数の研究者が共同研究で予測を立てる。新規の感染者のウイルスの遺伝子配列の網羅的解読と解析が必要である。


日本での感染者の増加は中国や欧米の流行から遅れていたので、準備しておくための情報も余裕もあったはずなのに、なぜ今になっても決められないのか全く不可思議である。