2022年9月5日月曜日

ハイブリッド免疫

欧米でコロナの感染が収まってきているのに日本の感染者がなぜ多いのか?

その原因は、欧米では自然感染している人の割合が多く、例えば米国では60-80%ほどの人が自然感染しているが、日本は5%(2022年3月時点)ほどであるからです。

最近わかってきたのは、自然感染してワクチン接種をした人は「ハイブリッド免疫」が成立しており、ワクチン接種だけの人より免疫が強いことです。

ワクチンを接種した人でも、口腔、上気道の粘膜での感染の予防効果が弱いので、感染した場合、他者を感染させます。一方、自然感染した人は粘膜での抗体の量が多いので感染しにくいと思われます。

最近、欧米ではだれもマクスしていない、日本人はいつまでマスクしてるのだという発言が多いです。しかし、上記のように状況が違うのです。物事は単純でなくて複雑なのです。

欧米で感染者が多いということは後遺症の人も多いということで、これから深刻な問題になっていきます。だから、ワクチン接種してから自然感染すればよいと考えるのは危険です。ワクチンには後遺症の発生を抑える効果がありますが、完全ではありません。


今後の問題は、ハイブリッド免疫がどれだけの期間維持されるかです。それが弱くなってくると、再び感染が広がってくるでしょう。

急いで必要なのは、現在開発中の鼻へのスプレー式、あるいはウイルスのスパイクタンパク質のアメのワクチン(スプレーでなくて口の中に入れるだけで効果があることがわかった)を早く使えるようにすることです。

2022年8月30日火曜日

がっかりすること 無駄なコロナ対策

夏休みが終わり、小学校の先生が一生懸命に教室の机をアルコール消毒して拭いている映像がテレビのニュースで流れていた。扉まで拭いていた。

葬儀社はいまだに、亡くなった方を袋に入れているという。

この国の責任者は、なぜ、このようにまったく意味がない感染対策を止めるように言わないのか。

新型コロナウイルスは、エアロゾルによる空気感染が感染ルートであり、接触感染はほとんどないことは、このウイルスが出現して半年後には明らかだった。その後の多くの研究論文がそのことを支持している。

科学的根拠がないことを怖れる必要はない。

「怖れない」で思い出したが、外を散歩する時にマスクをする必要は以前から全くない。最近、半数ほどの人がマスクをしていないので少し安心である。

 

「コロナは終わった。コロナは普通の風邪と同じになった。これまでのように怖れる必要はない。ウイズコロナで行こう。」

という言説が世界的に流れている。しかし、これも科学的にみて間違っている。

このように人々に思わせるのが、新型コロナウイルスの巧妙な戦略です。

世界はこれから、後遺症による多様な健康被害の増加に対処しなければならなくなるだろう。 さらに、新たな変異ウイルスが生じるでしょう。

 


2022年8月27日土曜日

多くの動物へのSARS-CoV-2感染が拡大しています

新型コロナウイルスSARS-CoV-2は、コウモリから人間に入ってきたと考えられています。感染が始まった頃に、ネコやイヌなどのペットにも感染するのですか?と問われたことがありましたが、当初、報告はありませんでした。

2021年の2月にイヌでの感染が報告されました。また、デンマークでのミンクの感染、香港のペットショップのハムスターの感染が報道されています。膨大な数のミンクが殺処分されました。

これまでの調査によって、SARS-CoV-2は、23種の動物に感染を広げていることがわかりました。35カ国での報告があります。感染が確認された動物は、トラ、ライオン、ネコ、イヌ、ゴリラ、オジロジカ、ハムスター、ミンク、カワウソ、アリクイ、マナティ、カバなどと幅広いです。

 

各種動物に感染を広げたSARS-CoV-2ウイルスは、変異を繰り返して、再び人間に戻ってくる可能性があります。なかでもネコ、イヌから人間への感染ルートがもっとも危険です。

緊急に必要なことは、SARS-CoV-2を含めて、人間と接触がある動物たちが有していいる全ウイルスのサーベイランスでしょう。動物から飛び越えて人間に感染しうるウイルスはSARS-CoV-2だけでなく多数あります。地球温暖化の影響で人間と動物たちの接触が多くなっていることも気がかりです。

すべての生物はウイルスと共に地球上で進化してきて、共に生きていることは、苦しみも伴うことです。鳥や羊や牛がウイルスに感染した場合、人間は徹底的に殺処分を行うことも。


2022年8月6日土曜日

北海道カボチャ

先日札幌で、北大に就職したドイツ人と話をしていました。彼がドイツで「日本の北海道に行く」と言ったら皆に「ああ、カボチャのところね!」と言われたそうです。ドイツのスーパーに行くと「Hokkaido Kürbis」というかぼちゃが売っているのでみんな知っています。カボチャ=北海道です。Hokkaidoカボチャは欧州の他の国でも売られているそうです。Hokkaidoが日本にあることを知らない人もいると思う。でも北海道という品種のカボチャは日本にありません


京都は、1997年の気候変動に関する国際会議で採択された「京都プロトコール(議定書)」としてドイツで知られているのは意外でした。他の日本の都市では鈴鹿が有名だそうです。東京に加えて、広島、長崎はもちろん知られています。

ドイツ人の彼が日本のスーパーで見つけて笑ったのはフランクフルトソーセージだそうです。


 

2022年7月26日火曜日

マスクをすると新型コロナ感染が拡大する??

ネットのコロナ関連のニュースにはとんでもないことが書かれていることが多い。

欧米ではマスクをする人がほとんどいなくなったのに、日本はみんなマスクをしているのに感染者が増えていることから公衆衛生に詳しい医師が考えたという。

「隙間のあるマスクをしている人は逆にエアロゾルを多く排出している可能性がある」  

「マスクをすることで呼吸器系の鼻腔、口腔、肺内、気道の温度が上昇し、排出されるエアロゾル量が増え、より感染が拡大しやすくなっているのではないか」

両者とも科学的根拠が全くない思いつきでしかない。このような記事をのせる記者もこの思いつきを疑うことをしない。

残念ながら、マスクに感染予防の効果がないという方は少なくない。

 

コロナの感染状況は国によって多くのことが異なります。何回も異なる変異ウイルスによる感染の波を経ると、人々がある時点で有している免疫も国により異なります。欧米でマスクをしていないのを見て、日本でもと考えるのは単純すぎるのです。

換気が悪く、人が密集している場所ではマスクの着用によって感染を防ぐことができます。特に夏は冷房を行うので多くの場所で換気がされていません。室外ではほとんど必要がないでしょう。

査読読前の米国の研究者の論文によると、1732人を調べた結果、マスクをしていて感染したのは7%、マスクをしていなくて感染したのは52%であったという。マスクの効果を調べた論文は数多くあります。

2022年7月21日木曜日

エアロゾル中のSARS-CoV-2の感染力はすぐになくなる

SARS-CoV-2の感染者が息をしたり喋ったりするときに排出されるウイルスを含んだエアロゾルを吸い込むことによって感染が起こります。一定量以上のウイルスを吸い込まないと感染が成立しないでしょう。

呼気のエアロゾルの量、および含まれているウイルス濃度は、個人によって100倍以上の違いがあることが知られています。したがって、 感染してエアロゾル量が多い人(スーパースプレッダー)が隣にいるかどうかがポイントになります。

エアロゾルの中のウイルスは、空気中でどのだけの時間、感染力を保っているのでしょうか?

これまでは、空気中で1ー2時間感染力を有しているという報告がありました(回転ドラムを用いた実験による)。したがって、感染者が滞在していた換気が悪い部屋に入ると感染することがあると考えられてきました。
 

より自然状態に近い実験方法を用いて秒単位で調べた結果、エアロゾル中のSARS-CoV-2の感染力はそれほど長くは保たれないことがわかりました。これが正しいならば、私たちが感染を防ぐために注意すべきことがより明確になります。


相対湿度45%未満では、液滴粒子の風解(efflorescence)とよばれる現象により、水分が無くなることで1分以内に感染性がなくなる。

相対湿度90%では液滴
粒子は水分を保ち、ウイルスの安定性は最初の2分間は維持されるが、それ以降は低下し、10分後には10%の感染性しか残らない。液滴内の塩濃度、pHなどが感染力の低下に関係しているようです。ウイルスの変異によってこれらの結果は変わらないという。

感染者から排出されたエアロゾルを数分以内にごく近くにいた人が吸い込むことによって感染が起こると考えられます。湿度が高い環境ではその時間と距離が少し長くなるでしょう。夏の湿度が高い日本と湿度が低い欧米では感染力の低下の時間はかなり違うでしょう。

この結果から考えると、いわゆるソーシャルディスタンスをとることはとても重要です。感染者から離れているほど空気中を移動してくるウイルスが感染力を失ってくるからです。

換気とKF94などのマスクをすること、CO2モニターで換気状態を監視することが要の感染対策です。

2022年7月6日水曜日

勉強不足の専門家が無視しているコロナ後遺症 Long COVID

ここ数日のコロナ感染者数の増加が急激です。8月にピークになるとの予測があったのですが、7月中にピークとなりそうです。感染者が急増するのを防がないといけません。冷房により室内の換気が悪くなることが一番心配です。換気をすると冷房の効果がなくなりますが。

 

「 オミクロンBA.5による感染者数がどれだけ増加しても、入院が必要な重症者や死者が低く抑えられていれば問題はない」という専門家の意見がありました。

オミクロンBA.5に感染しても全員が元通りに快復できればその見方は正しいです。実際、感染した人の半数以上はそうなります。しかし、そうだった人が「コロナは普通の風邪より楽だった」と言ったとしても、それはすべての人に当てはまるわけではありません。

「しかし感染すると軽症であっても後遺症がある場合があるので感染しないように対策をする必要があります」 を付け加える必要があります。

残念ながら、これまで紹介してきたように、このウイルスは体内の様々な所で後遺症を残します。糖尿病、心臓病、骨粗鬆症、アルツハイマー、認知症など多様です。後遺症は感染した人の一部であり、それがわかるのは、感染してからしばらくしてからです。

 

 「少なくても若年者の感染者の症状を見る限り、すでにかぜレベルに近い 」

「BA・5の感染力は従来の派生型と大差なく、第7波をつくることはない。ワクチン接種や治療薬なども出そろい、『ウィズコロナ』の準備ができている。」

この発言は、専門家の肩書きがある二人が述べたもので、新聞にも載っていました。この二人も冒頭の発言の人と同じく、研究論文を読んで勉強していないことがわかります。

BA.5の感染力がこれまでのタイプと大差がないという報告、研究論文があるのだろうか。大差なければ増えないはずです。現行のワクチンによる免疫、以前の変異ウイルスに自然感染した免疫は、BA.5に対しては防御が低下しているという複数の論文も読んでいないようです。

このように誤った発言を掲載する報道に係る人も問題です。科学的な考え方ができるマスコミ関係者はこの国では稀にしかいません。

2022年7月4日月曜日

コロナと骨  COVID-19 can cause bone loss

新型コロナによる自粛で人々が運動不足になり骨粗鬆症の人が増えると言われています。ところが、これまでの複数の研究によりコロナ感染により骨量が減少することがわかってきました。研究はマウスやハムスターを用いて行われています。治療に用いられるステロイドによっても骨の減少が起こりますが、コロナウイルスの感染が骨に影響を与えているのです。

 破骨細胞(骨を破壊し再吸収する細胞)が増加しているという報告があります。コロナ感染により引き起こされる体内の炎症シグナルであるサイトカインが骨代謝の制御を乱すようです。軽度、無症候感染のマウスでも観察されています。

コロナによって骨粗鬆症の人が増加することになります。コロナの後遺症は体内のあらゆる場所で起こっています。新型コロナは、肺炎のウイルス、風邪のウイルスというは完全に誤りです。

日本ではコロナに感染した人は割合はとても低いのですが、ほとんどの人がコロナに感染している国では、さまざまな健康被害がこれから問題になってゆくのは確かでしょう。

2022年7月1日金曜日

第7波 Omicron BA.5 (22B)

 

上のグラフはオミクロンの変異ウイルスが日本でどのように置き換わってきたかを示しています。今年の2月はBA.1(緑)がメインでしたが、BA.2(紫)に置き換わった。そして今、BA.5(水色)が増え始めています。BA.1/BA.2と同じ速度で置き換わるとすると8月にはBA.5がメインになっているでしょう。BA.5で深刻な問題は、ワクチンの免疫による防御が弱くなっていることです。そのため感染者が急増する可能性があります。重症化の程度はBA.1/BA.2と変わらないと意見と、強いという意見があり安心はできません。感染者の総数によっても違うでしょう。

 

新型コロナウイルス(SARS-Cov-1) がどのように進化してきたかの系統図。一番右上の朱色の丸がBA.4, BA.5を示します。このように変異を繰り返して進化しているので、今後、どのような変異が出てくるのは予測できません。人間が感染を広めるほど変異が多くなってゆきます。コロナウイルスを長期間に渡って体内に保持している例が見つかっており、その場合、変異のチャンスが増すことになります。一人の人の体内でも変異が起こるので、多様な(免疫を回避する)変異ウイルスが生じる可能性があります。

世界中でどの種類の変異ウイルスの感染が広がっているかの地図。米国でのBA.4, BA.5の割合が多い。

このようなリアルタイムのデータは、ウイルスの遺伝情報の解読によって得られています。今から20年は、このように早く知ることができなかったデータです。

出典

nextstrain

GISAI による

BAは何の略号なのと訊かれました。通し番号です。

ウイルスは変異を繰り返しているので、新しい変異が見つかると分類するために
 A to Zで命名します。Zまで行くと次は、AA to AZ, BA to BZです。BAが感染力が強く感染を広げて、BA1から始まって、BA2、BA4とBA5変異したわけです。数字はBA.2.75のようにも追加されて行きます。

デルタまでは大きく変異した新たな変異ウイルスが新しい感染を引き起こしてきたのですが、オミクロンの場合は、オミクロンから派生した変異が感染を引き起こすことができるという別の戦略が出てきたわけです。人間の免疫から逃避する方向に進化しています。

2022年6月29日水曜日

Joan Miró ミロ

Blue II

いつだったか、パリのリサのおうちのポンピドゥセンターで開催されていたミロ展に行ったことを思い出した。その時のテーマはBlue I, II, III.だった。

 

名古屋の栄のホテルからバス乗り場に歩いて行く途中に愛知県美術館がある。美術館はビルの10階で、コンサートホールもある高層のビルは愛知芸術文化センターという。

 2022.06.25 ミロ展が開催されているのを知って福岡に戻る日に訪れた。ホテルのチェックアウトの時間からフライトの時間まで2時間の余裕があったのが幸運だった。

ミロ展はミロの日本の芸術文化への憧れがテーマであり、名古屋の次は富山で開催される。福岡には来ない。なぜ富山かといえば、ミロとも親しかった瀧口修造の故郷であるからだろう。富山美術館のキュレーターがこの企画に関わっていたのではないかと思う。実際、富山美術館が出しているフライヤーがとてもきれいにできている。富山の入場料は名古屋よりはるかに安いのが羨ましい。

わたしがミロの抽象画に惹かれるのは、パウル・クレーに惹かれるのと共通の要素がある。実際、展示されていたミロの動物の絵はパウル・クレーが描いていたものと似ていた。

展示されていたミロの言葉で「わたしは詩と絵を区別しない」とあった。ミロの絵は詩でもある。絵に詩の文字も書いているし、俳句に絵を添えている。絵から詩を読み取ることもできる。特に私が好きなのは何も描かれていない色が塗られた広い空白。パリで出会って以来、Blue IIの青の上に描かれた赤い線と黒い点は何を象徴しているのだろうかと思い続けている。黒の点によって青にできた余白が訴えてくる。

2022年6月27日月曜日

スーパースプレッダーが感染源となる

感染者60人を14日間、毎日鼻腔と唾液をサンプリングしてPCRでウイルス量を調べた研究があります。

横軸がウイルス量、縦軸が人数を示します。

感染者によって排出されるウイルス量にかなりの違いがあることがわかります。60人中の6人ほどがスーパースプレッダーに当たるかも知れません。一方、30名ほどの人からはほとんど感染が起こらないのではないかと推測されます。


コロナによる脳後遺症の大規模調査 デンマーク

コロナ後遺症について知るには感染の波が終わって半年以上が経過してから、感染した人と感染しなかった人を比較した大規模調査が必要です。今回、デンマークの結果が発表されました。

2020年2月から2021年11月までのデンマークにおける入院患者および外来患者を調べたものです。ウイルスはアルファからデルタ変異だと推定されます。

コロナの検査を受けた919,731人のうち、感染者では、アルツハイマー病と診断されるリスクが3.5倍、パーキンソン病が2.6倍、脳梗塞が2.7倍、脳内出血が4.8倍でした。コロナウイルスは脳に多面的に影響を残していることがわかります。

後遺症で知りたいことは、ワクチン接種が後遺症の発病に有効かどうかと、オミクロンによる後遺症はデルタなどによる後遺症と違いがあるかです。デンマークでは多くの人が2021年の秋に2回目のワクチン接種を終えていた状況だったので、ワクチンの効果についてはわかりません。オミクロンについては、あと半年結果を待つ必要があります。

2022年6月13日月曜日

「らじゃ」は英語


人名のRogerを米国人が喋るのを聞くと、ロジャーでなくラジャのように聞こえます。それが了解の意味で使われている。これは、無線の通信用語で、受け取りましたの
receivedが聞きとりにくいので、"R"だよというときに使うRogerをそのまま使うようになったわけです。received→R→Roger

そこで思い出しました。

その昔、国際線の飛行機で旅行する時、リコンファーム予約再確認が必要だった。目的地に着いて、帰国便をリコンファームする。ちゃんと乗りますよと席を確保してもらうのだが、なんでそんな面倒なことをしていたのか不明です。航空会社に電話してリコンファームしたいと告げてフライトと名前を言うが、ある時、名前がないと言われたことがある。TanimuraをDanimuraと聞き間違えられたのだ。それがわかって、Tiger’s “T”と言わなきゃ!とアドバイスされたことを鮮明に覚えている。それはアメリカのニューヘブンでだった。

 すべてのアルファベットについてよく使われる単語が決まっている(Spelling alphabet)。 

今ではリコンファームはなくなったと思っていたら、まだ必要な航空会社がありました。

2022年6月12日日曜日

適切なコロナの感染対策は何なのか?




このグラフは第1波以来の日本の死亡者の日毎の実数です。第1、第2波での死亡者がいかに少なかったかがわかります。オミクロンが現れた時、この変異ウイルスは弱毒化していると巷では言われていました。ところが第6波の死亡者が飛び抜けて一番多かったのです。昨年の秋にはワクチン接種の2回の接種が全人口の80%ほど終わっていたのにこれだけの死亡者が出たのはオムクロンは3回接種しないと抗体レベルが上がらないからでしょう。



このグラフは、昨年の1月からの人口あたりの感染者数のニュージーランドと台湾と日本のデータです。ニュージーランドと台湾はコロナ対策の優等生と言われていました。島国であるため、厳しい入国制限でこれまで感染を完全に抑えてきたはずです。ところが、対策を緩めた結果がこれです。

人口あたりの感染者数の累積曲線です。ニュージーランドと台湾の人口比感染数が日本を上回っています。韓国も6月から急激に増えました。欧州では、フランス、英国、ドイツ、スウェーデンの順番です。厳重な感染対策を行わずに集団免疫を目指しているとマスコミ上で批判されたスウェーデンの死亡者累計はそれほど多くありません。ロックダウンをした英国と比べても少ないです。

このようなデータを見ると、感染対策がいかに難しいかがわかります。国によって様々な条件が異なります。ある国で有効だった対策が他の国でも有効とはかぎりません。スウェーデンでは初めからマスクをほとんどしていませんでした。 人口密度によって人の接触の頻度が異なると予想されますが、スウェーデンの人口密度は日本の1/19ほどですから、マクスの効果は限定的かもしれません。

さて、これからどうなるのでしょうか?

 

まず必要なのは、何が有効な感染対策であるかをはっきりさせることです。過剰な怖れが引き金になって多くの意味がない対策が取られてきました。

例えば、感染拡大時にも大学の対面授業を行うにはどのような対策が必要かが考えられていたでしょうか。

先に紹介した、米国の大学のキャンパスの各所で空気をサンプリングしてウイルスの量を調べた研究、学内でのすべての感染者のウイルスの遺伝子配列を調べて、誰から誰に感染していたのかを調べた研究などは有効な感染対策を考える上で参考になるでしょう。

希望は、感染の予防効果があるワクチン、どのような変異ウイルスにも効果があるワクチンが開発されることです。来年に接種できることを期待したいです。

不安材料は後遺症です。後遺症はしばらく経過しないと実態がわかりません。

2022年6月9日木曜日

研究費の選択と集中の配分で大学はよくならない

文科省は新しい言葉を巧みに用いて大学を競走させてレベルアップしようとしている。 例えば2014年から始まったスーパーグローバル大学事業がある。ひとつに、講義を英語で行うという目標があるが、同じ内容でも英語だと学生の理解度が落ちることは明らかである。大学の世界ランキングを上げるのが目標だったが無理だ。

資金運用で儲けた巨額の資金を大学に投入すれば数年で成果が出て、特許が取れて金儲けができると政府の人は思っている。そのような応用志向の研究分野はあるが大学の理系分野のすべてがそうではない。応用研究は工学部の領域だろう。しかし、理学部の多くの研究は基礎研究であり、応用研究とは異なる方針で行われている。

理学部の生物にいた現役時代、私は、世界中でだれもやっていない独創的な研究を目指していた。研究は少額の研究費があれば一人ででもできる。成果が世の中で役に立つかどうかなどは考えなく、ただ、おもしろい着眼点による研究を志していた。研究の半数ほどは何も結果がでなくて諦めたが、数年経って新たなひらめきから新たに研究が進んだものもある。

研究費を申請する際に、その研究がどのような社会的意義があるのかを書く欄ができた。意義がありそうに読めるような文章をを書かざるをえない。

現役時代に業績評価が重視され、細々とした情報の入力を強制された。その中で納得できなかったことがある。5ヶ年計画を立ててそれがどれだけ達成されたかを自己評価する欄である。画期的な研究は突然のひらめき、思いつき始まるものである。しかし当初計画にない研究は評価されないのだという。 

どうすれば日本の教育、研究を変えることができるのか?教育に対する国の財政支出があまりにも少ない。見返りを求めない下支えが必要だと思う。教育に携わる人を増やして経済的に支えることだ。


 

2022年6月3日金曜日

読書日記「南島に輝く女王 三輪ヒデ」


   倉沢愛子著「南島に輝く女王 三輪ヒデ」国のない女の一代記 岩波書店 2021


倉沢愛子さんはインドネシア現代史の研究者。インドネシアの文書館に整理もされずに埋もれていた一通の手紙を読んで、そこから一人の日本人女性の生き方を15年の調査を元にして掘り起こして書いた伝記です。その手紙に気がつかなったなら、この本は書かれなかっただろう。末娘の方がインドネシアでご健在で著者は何十回も足を運び、国内外を旅して調べた。

昔、函館は横浜と同じように世界と繋がっていた。1860年に建てられた函館ハリストス正教会からもわかるように、函館はロシアとの結びつきがある。

函館でロシアから亡命してきた貴族出身の男性と結婚した三輪ヒデはオランダ領東インド(インドネシア)に移住し農園を経営し9人の子供を産んだ。ところが、太平洋戦争が始まり日本軍がオランダを追いやって東インド全域を軍政下に置いた。しかし、日本が敗戦するとインドネシアの独立戦争が起こる。日本、オランダ、インドネシアの複雑な歴史に翻弄されて9人の子供たちは世界に散らばった。三輪ヒデはオランダから米国に渡るが最後はインドネシアで骨をうずめた。反乱万丈の一生だった。ロシア人の夫とは離婚をするが、無国籍の夫はインドネシアを一度も離れなかった。

三輪ヒデの差別や迫害をも乗り越えた生きざまは実に逞しい。一通の手紙からすばらしい物語を導き出した著者に感謝したい。


コロナ接触感染の可能性は極めて低い

新型コロナはエアロゾルによる空気感染がメインで接触感染はほとんど問題ではないことをブログで何回も書いてきました。そのことを支持する多くの研究論文は数多くありましたが、実際の生活環境でウイルスの量を定量分析した今回の論文は初めての成果だと思います。

場所は米国の大学で、1年間、学内の多くの場所とバスで空気と表面からサンプリングしてウイルス(SARS-CoV-2)を分析しています。

256の空気サンプル、 517個の表面のサンプルを9ヶ月の間に得ています。ウイルスが含まれていたのはサンプルの1-2%ほどでした。ウイルスが一番多かったはジムです。一方、講義室、食堂、事務室、コーラス練習室、演劇ホールなどではウイルスが検出されませんでした。

感染モデルによって得られたデータを用いて感染の確率を計算したところ、接触感染が起こる可能性は10万分の1で、空気感染の1/1,000でした。接触感染は一本の指に付着したウイルスの全量が例えば鼻の粘膜に接触したと想定しています。空気感染は、ジムでは一定時間、運動を行う時に吸い込む空気量(マスクなし)からどれだけのウイルスを吸い込むかを計算しています。

空気の場合は、否応なしに体内に吸い込まれるが、接触の場合は、手についたウイルスが粘膜と接触しなければならないのでその可能性は高くはないと思われます。

このように空気中のウイルス量を調べるというアプローチは有効でしょう。ただ、局所的な空気の動きで感染が起こることは捉えることができません。



2022年6月1日水曜日

高齢で身体能力が低下することはよくわかる

労災で亡くなる方の中の高齢者の割合が増えているというニュースは、経済的な問題によって高齢者が危険は場所で働かざるを得ないという日本の貧困の現状を露わにしている。

年金支給開始が遅くなり、物価は上昇しており、危険な職場であっても非正規で働かざるを得ない。建築、製造で働く人が大部分だが、身体能力が低下していることを配慮した安全対策が講じられていないという。

比較にはならないが、フィンランドでは住宅手当もあり、毎月の最低年金限が保障されているそうだ。税金は高いが、皆が幸せに老後を暮らせるように設計されている。介護が必要になれば手当が支給される。

2022年5月7日土曜日

英国における後遺症の統計

日本の新型コロナ感染者数はようやく全国的に減少してきました。死亡者数の減少は続いています。オミクロンのBA.1からBA.2に置き換わっていて、次にはBA.3とBA.4が入ってくるでしょう。これらは感染力が強くなっている変異ですが、病原性が強くなっている可能性があります。3回のワクチン接種に重症化予防効果はあるようです。マスクの着用をやめるとすぐに感染が広がるでしょう。 正しい感染対策の継続が必要です。マスクを着用しなくてよいという方針は完全に誤っています。

問題は後遺症です。どのような割合で後遺症が残るかの数値の様々な報告がありましたが、英国の今年の3月の統計結果を紹介します。

コロナに感染して4週間後でも症状があると報告した人は英国の人口の2.8%で、昨年から徐々に増えています。今年の3月の時点で感染した人に、日常生活に影響があるかを尋ねたところ、32.6%が全くない、48.1%が少しある、19.3%が大いにあるという答えでした。

この数字を見てもウイルスとの共生はできません。感染を避けることが必要です。

 ワクチン接種によって後遺症が軽くなるという報告がありますが、無くなるわけではありません。

2022年4月30日土曜日

正解を選択する日本の試験、考えて文章を書くフランスの試験

日本人の漫画家と結婚したAFP通信特派員のフランス人女性が書いた本を読んで、なるほどど面白かった。

西村・ブペ・カトリーヌ著「不便でも気にしないフランス人、便利なのに不安な日本人 心が自由になる生き方のヒント」大和書房 2017

日本がフランスやドイツなどと違って一番便利なのは24時間開いていて、どこにでもあるコンビニである。海外では、特に休日や夜に食べるものを買うのに苦労する。

国と国を比較した本は数多くあるが、この書物は良質な内容である。差異をことさら強調するのではなく、違いを認めあって、他国を参考にして自国をよくしていきたいという姿勢がある。

フランスでは見ず知らずの人にも話しかける。メトロで隣の人が読んでる本が面白そうだと思ったら迷わず声をかけて感想を訊ねたりする。

そのほかに以下のことが書かれている

明日の天気を気にする日本人、その日暮らしのフランス人
日本では信じられないほどたくさんのビジネス書が売られている
マニュアルが上手な日本人、アドリブが得意なフランス人
バカンスのために働くフランス人、ちゃんと働くために休む日本人
有給休暇は病気につかわないフランス人
ストライキばかりのフランス人、退職まで一度もストライキしない日本人
本当にすごい日本の宅急便、本当に届かないフランスの荷物
外国人に慣れていない日本人、移民が常識のフランス人
正解を選択する日本の教育と試験、答えがなくて議論して創造性を育むフランスの教育と試験
上司の年齢は関係がないフランスの会社、年功序列の日本の会社
結婚するのが目的の日本人、恋愛できればなんでもいいフランス人
口癖が出会いがないの日本人、偶然の出会いを引き寄せるフランス人
古い家ほど人気があるフランス
お金があっても心配する日本人、お金がなくても気にしないフランス人
集団が得意な日本人、何よりも個人が先にあるフランス人
政治が好きなフランス人、政治を語らない日本人
ロボットに愛情を感じる日本人、ロボットをものととらえるフランス人

日本のよい点は、完璧主義で、誠実で、清潔で、安全、サービスは正確で信頼できて便利。

問題だと思うことは、
コミュニケーションの希薄化、人と人が心を開いて会話しないこと
学校の試験方法
教育費が高い 親の経済力で教育が不平等になること
保育所の充実
養子縁組が少ない
いまだに被災者が仮設住宅に住んでいるのはおかしい
発言の自由 報道の自由 表現の自由

2022年4月23日土曜日

コロナウイルスSARS-CoV-2の変異と進化


このグラフは、武漢で新型コロナの感染が始まってから(円の中心から外方向が時間軸)、このウイルスがどのように変異していったかを示しています。世界中の感染者から採取したウイルスの決定された遺伝子配列に基づいて丸をプロットしています。色の違いは変異を生じたウイルスが感染力を強めるなど性質が変化した場合です。

ウイルスが増殖するときにある確率で変異が生じています。同じ色の点は変異が生じてもウイルスの性質に変化はなく同じグループに属すると考えられることを意味している。

円の右側を見ると、オミクロン21K(BA.1)と21L(BA.2)の2つの型の広がりがわかります。21Kのオミクロンが現在、世界中で広がっています。オミクロンの起点をみると初期のウイルスから突然出現していますが、他の型のウイルスは系譜の流れから生じています。

デルタとオミクロン以外のいくつかの変異ウイルスは広がらないで消えています。下の図はその変遷をわかりやすいです。これからどのような変異ウイルスが出現するかは予測ができません。

 図は、https://nextstrain.org/より。クリックすると大きく見えます。

2022年4月22日金曜日

long-COVID 脳の後遺症

世界が「withコロナ」に向かって動き始めている。「コロナを終わりにしないと日本に未来はない」という声があがっています。

欧米の多くの国ではほとんどの感染対策を無くしているのに、なぜ日本はできないのか。 テレビに出てくるウクライナやポーランドの映像ではだれもマスクしていないじゃないかと。

 確かに、経済活動にしても、旅行、観光にしてもこのままでは良くないし、対面での交流を回復したいと誰もが願っている。もう限界だと思っている。

問題は過剰な怖れを人々が抱いていることと、正しい感染対策が行われていないことである。例えば、多数の人が歩いている場所でなければ外を歩く時にマスクは必要でない。対策でもっとも重要なのは換気である。人が集まる場所での換気設備の導入にお金を使うべきあり、そのことを行った国もある。

そして、終わりにできない重要な問題がある。withコロナでは一定の人々の後遺症という健康被害が生じ続ける危険性がある。その治療法はまだわからない。

脳の容積をスキャンで調べた最近の論文の日本語の雑誌解説記事は客観的なデータだ。わたしたちの脳の容積は加齢と共に年に少しづつ減少している。ところが、新型コロナに感染した人を調べると0.1%から2%も減少していた。その変化が脳に機能にどれだけ影響するかであるが、確かに調べてみると差がある。

このデータはデルタ変異についてでオミクロンについてはまだわからない。オミクロンでもデルタのように味覚や嗅覚障害の報告が少ないもののあるので、脳への影響も無視できないだろう。

2022年4月13日水曜日

sneakyなウイルス

ウクライナの状況を日々見聞きしていると時があまりにも早く流れてゆきます。

新型コロナの今後が見えにくくなっています。ひとつは、規制があまりにも長く続いたので人々が解放されたいという願いをこれ以上我慢できないことにあります。欧州ですべての規制を撤廃して、誰もマスクをしていない映像も多く目にします。コロナは普通の風邪になったので検査もしなく共存してゆくという。

ある英文記事で、"SARS-Cov-2 is a sneaky virus."という文を読んだことがある( SARS-Cov-2は新型コロナウイルスの正式名)。sneakyとは「こそこそする 卑劣な」という意味であり正しいと思う。

SARS-Cov-2は言います。

「君たちはやっとぼくたちことがわかったきたね。ぼくたちは普通の風邪ウイルスだったのよ。いろんな対策はすべてあまり意味がなかったんだ。日本人なんてまだみんなマスクをしててバカじゃないの。ワクチンは企業の金儲けのためだったんだよ」

これを鵜呑みしてよいのだろうか?

人口あたりの7日平均の死亡者数の2022年初めからの変化


2022年3月31日木曜日

新型コロナ「エアロゾルでも感染」感染研、見解を変更

この毎日新聞のタイトルですが、感染研の見解はまだ間違っています。「エアロゾルで感染」が正しいのです。そのことは2年前からわかっていました。今になって変更するとは!感染研は極めて特殊な科学者集団であることがわかります。いや、まともな科学者とは言えません。

いくら遅くても、WHOが見解を変更した時点でそれに従うことができたはずです。2020年の7月に「エアロゾル」感染の証拠認識、WHOが見解と報道されています。2021年4月にようやく変更しています。

これまでの誤った感染対策を直ちに訂正することが必要ですが「エアロゾルでも感染」の見解からは訂正しないでしょう。

2022年2月18日金曜日

根拠がない発言

米モデルナの最高経営責任者が次のように語ったと朝日新聞に報道されていたが根拠がない発言だ。このような記事をノーチェックで載せてしまうとは呆れる。

「パンデミックはいま最終段階を迎えていると思うか」と問われ、「妥当なシナリオだ。80%の確率で、オミクロン株が進化するにつれ、新型コロナウイルスの毒性が弱くなる」「残りの20%のシナリオは毒性の強い次の変異株が出現することだ」

オミクロンはデルタが変異して出現したものでないことに留意してほしい。想定外の変異である。オミクロンが変異して弱毒化する保証はない。どのような変異が出てくるかは予想できない。80%にも根拠がない。

2022年2月11日金曜日

感染対策について思うこと(4)

✳️ オミクロンの後遺症について報告がでてきた。喉の痛みや咳が続くという。

✳️  福岡の2月8日のPCR陽性率48.1%ですごいと思っていたら、神奈川は84.9%だった。すると、神奈川県が発表した。「オミクロン株の感染拡大を受け、医療機関等の業務がひっ迫しています。検査数の把握が困難となっていますので、一旦、検査数・陽性率の公表を停止します」

✳️  東京、大阪などでは、コロナでない緊急搬送が困難なほど医療が逼迫している。欧州の国では感染者も入院数も日本と比べて圧倒的に多いのに、病床に余裕があるようだ。日本は準備が足りなかったのではないか

✳️  新型コロナの深刻な問題は、Long COVID 後遺症です。子供たちはコロナに感染しても重症化しないので深刻な問題ではない。ワクチン接種も必要でないのではと議論されている。しかし、子供にも後遺症があるという報告がでてきた。

✳️ デンマーク、フィンランド、スェーデンなどはコロナ規制を解除するという。しかし、この3国の感染状況(下図)を見るともう少し待つべきだ。 

人口あたりの死亡者数が上昇している


2022年2月9日水曜日

感染対策について思うこと(3)

✳️ 多くの県でPCR検査の陽性率が40%を超えており極めてまずい状態だ。その10分1ほどが市中の感染率だと思われる。

✳️ いくつかの県で感染者の減少傾向が見られているが、他の県ではまだ上昇している。減少している県でも高止まりの傾向が見られる。今月中は厳しい状況が続きそうだ。重症化、死亡例がこれから増加するだろう。

✳️ Covidの対策は先を読んで行う必要があるのに、オミクロン感染の当初まだ面の広がりになっていないとか言って対策を疎かにしていた。

✳️「岸田首相はワクチンの3回目接種を「1日100万回」とする目標を掲げた」。自治体の責任者に一番圧力がかかるのかな。2回接種の8ヶ月後で準備していた根拠が明らかでないが、オミクロン変異を警戒し始めた昨年の12月に接種を早める準備ができたはずだ。しかし、首相自らはそのような判断ができる能力はないので、首相あるいは厚労省の周辺にいる人が助言しなければいけなかった。

✳️ 今回使われているコロナのmRNAのワクチンは重症化を防ぐことはできるが、感染を防ぐことができない。鼻腔にスプレーするワクチンがこれまでに考案されている。最初にコロナのmRNAのワクチンを接種した後にスプレーワクチンをすることで、鼻腔の粘膜の免疫応答が強化できるという研究は有望で、人間での臨床テストの結果が待たれる。

✳️ 新型コロナウイルスであるSARS-CoV-2は、コウモリ起源だと考えられているが、他の動物にも感染することができる。これまで、ミンク、ハムスター、オジロジカ(white-tailed deer)などが話題になっている。北米のオジロジカはSARS-CoV-2に感染していて抗体もできているという。このような動物たちが人の感染経路とどのような関係にあるのかはまだわかっていない。

2022年2月5日土曜日

2歳の子にマスクをさせるのは不可能です!

昨日、夜7時のNHKニュースを見ていたら「2歳以上の子供たちはマスクを」といった後に、訂正がありますとなって「マスク着用を推奨」になった。政府の分科会で決めたらしい。

その前の2月3日に全国知事会が厚労省に要望したそうだ。

とするならば、この国のすべての指導者たちがどこまで無能であることか。誰一人としてそれは無理ですよと助言できる人がいなかったのか。


小学校での感染対策もニュースに出ていたが、今になって考えたわけだ。これは昨年の春からアドバイスしておくべきであった。

保育園、幼稚園での感染対策は難しい。幼児が感染した場合、無症状が多いことが知られている。症状がでる場合は、発熱と咳だろうが、コロナでない場合も多いだろう。

考えられる対策は検査を行うことだ。唾液を用いた抗原検査が迅速で良い。検査を週2回でも行えばウイルス量が多い子を見つけることができるだろう。(しかし、キットが不足していて実行できない。)

陽性であった場合は、幼児以外の者が常時KF94マスクをして換気に注意することが考えられる。幼児を隔離することは不可能だ。欧米の様に幼児が一人で寝る様になっていれば別だが。

幼児のマスク着用は、さまざまな面で弊害があり推奨すべきでないと思う。そもそも、2歳の子にマスクをさせるとすぐに外すだろう。

2022年2月2日水曜日

感染対策について思うこと(2)

✳️ 国立感染研が1月13日に公表した変異株オミクロン株に関する第6報には「現段階でエアロゾル感染を疑う事例の頻度の明らかな増加は確認されず、従来通り感染経路は主に飛沫感染と、接触感染と考えられた」とあり驚いた。これは世界の科学的な見解と異なり誤りである。このような見解を出しているので、社会では意味がない感染対策がいつまでも行われている。感染研の研究者は研究論文を読んでいないようだ。

✳️ 昨日、体育館でのワクチンを受けに行った。多くの人が働いていてご苦労さんだと思ったが、椅子に座っている人が立ち上がった後に座席をエタノール消毒していた。衣服にウイルスが付着していて座席に残り、つぎに座った人の服についてそれが接触感染を引き起こすことを心配しているが、その可能性はほとんどない。飲食店でもテーブルの上などをエタノール消毒しているが同様である。エタノールも人の労力もまったくの無駄である。ついでに言えば体温計はほとんどの家庭にあるので、自分で測って記入してくればよい。発熱があれば接種を延期すればよい。会場で使われていた赤外線の体温計では正確に体温測定ができないことがある。それに2回も体温測定をしていた。

✳️ 最初の2回のワクチン接種は病院で行ったが、接種後の待機を除いて待ち時間はなかった。集団接種は時間が掛かり、医師の問診があったが実に形式だけで数秒で終わった。長時間拘束される医師は報酬に見合う仕事をしているのかなと思った。

✳️ オミクロンが出てきた頃、このウイルスは弱毒化しており普通の風邪と変わらない、インフルエンザと同じレベルだという言説を何度も聞いた。そう言っていた人は、今の状況を見て同じことを言うだろうか。 調べてみたら、ある方は今も同じ発言をしていた。今日報道されていたデンマークのようにすぐに規制を解除せよと言っている人もいた。そのように言う人には事実の科学的な思考がなく、単に希望を述べているに過ぎない。デンマークは科学的根拠によって感染対策を取っている。高齢者の94%が3回目接種済みで全体でも60%を超えており、医療体制も検査体制もしっかりしている。

✳️  日本の3回目のブースター接種は遅れているので、今回の感染の波を早期に抑えることはできないだろう。接種がこれほど遅れたのはなぜだ。

✳️ PCRの陽性率が全国的に非常に高く、31日の福岡県は36.5%だった。検査を受けた人は感染の疑いがある人であるが、発表されている毎日の感染者数は、実際の感染者のごく一部だろう。

欧州におけるコロナ規制撤廃はどれだけ続くか?

英国、デンマーク、スペイン、フィンランド、フランスでは、国によってやり方が異なるが、新型コロナの規制を解除する。これらの国ではワクチンの3回目接種が40%を超えている。ドイツも超えているが、少し慎重のようだ。日本がそれに倣うのはまだ早い。完全な規制撤廃で感染者の減少がどのようなカーブを描くかはわからない。もし上手くいけば、一時的でも制限を撤廃することは、次の変異ウイルスの出現に備えるための準備になるだろう。


日本では昨年の10〜12月の3ヶ月は感染が抑えられていた。欧州の規制撤廃がどれだけ継続できるかはわからない。
新たな変異がすぐに生じなければワクチンの効果は半年ほどはあるだろう。

ただ、これで終わりではないだろう。ブースター接種による免疫も徐々に低下するので重症化予防効果も失われていく。次の感染の大きな波が生じないようにする対策が必要ではないか。新たな変異ウイルスに対しても有効な万能ワクチンの開発にはあと数年かかるという。

もう一つ理解しておく必要があるのは、新型コロナに対しては集団免疫は成立しないことである。自然に感染してできる免疫は弱くて、次の感染を防ぐことはできない。  

ワクチンの3回目接種の進行状況 日本はなぜこれほど遅いのか?

2022年1月29日土曜日

感染対策について思うこと(1)

日本でワクチン2回接種のデジタル証明が発行できるようになった時にはワクチンの有効性が低下している。役に立たない。欧州では、接種完了後9カ月以内に追加接種をしない場合、ワクチン証明書は無効になる。

3回目のワクチンにしても半年後には効果が低下するだろうし、イスラエルのように4回目を接種してもそれで終わりではない。

政府は相変わらず「まん延防止」を発令しているが、それによって感染が抑えられる効果は少ないだろう。飲食店の認証の判断基準もおかしい。無症状の感染者、濃厚接触者が通常と同じように行動していても感染がおこらないようにすることは可能ではないか。全員がN95/KF94マスクをして換気をすることである。

 留学生の入国を認めないことによる”国益”の低下を回復するには何年かかるのだろう。

マスコミは、感染者数の増減を毎日熱心に伝えているが、それによって国民が怖れ、行動が影響されることが日本の主な感染対策になっているのではないか。

抗原検査はPCRより著しく感度が低いが、ウイルス量が多い感染者を見つけ出すことはできる。自宅で短時間でできるという利点がある。薬局で無料で配布するなどして陽性者の隔離に役立てられるのに不足しているという。

 海外で各社の抗原検査キットを調べたところ、オミクロンを感度よく検出できないキットがあったという、日本で出回っているのは大丈夫だろうか。


2022年1月27日木曜日

long COVID: 新型コロナの後遺症

新型コロナの後遺症は深刻な問題です。普通の風邪やインフルエンザでは後遺症はほとんどありません。コロナに感染した人(中には無症状の人も)の30%ほどに後遺症がある。後遺症はしばらく経たないとわからないく、診断も簡単ではなく治療する方法もわかっていない。


イスラエルの3,000人のコロナ感染者を調べた結果が公開論文になった。
ワクチンを接種していた人は接種していなかった人と比べて、54%から68%、後遺症(頭痛、疲労感、筋肉痛)の症状が少なかった。2020年の5月から昨年の11月の間のデータだから主にデルタ変異によるものだろう。

 ワクチンによって後遺症が半分以下になる予防効果がある。感染を避けるのが賢明だ。おそらくワクチンの効果は接種後に低下してゆくのだろう。

オミクロン感染に後遺症があるのか、ワクチンが有効であるかはまだわからないが、少ないがあると思っていたほうがよい。

2022年1月22日土曜日

 Covid 希望的観測?

スペイン、英国、フランス、オランダがコロナ対策の制限を解除して普通の生活に戻ろうとしている。解除の仕方は国によって違うが、感染がピークを過ぎて、ワクチンの効果により重症者が少ないことを理由にしている。フランスはワクチンパスポートを使いながら2月から徐々に緩和してゆく。英国は一斉に解除することを考えているがそれは危険である。リバウンドが起こるかもしれないから。

これらの国では3回目のワクチン接種が40%を超えているのが解除のひとつの根拠だろう。ブースター接種によって抗体のレベルがかなり高くなることがわかっている(下図)のでオミクロンに対しても感染予防効果があることが期待される。

 しかし、その効果は次第に減衰してゆく。T細胞による重症化予防効果がどれだけ続くかはわかっていない。イタリアのデータによると重症化予防効果も半年で半分になるという。

4つのカラムは、左からwuhan, omicron, beta,deltaの変異ウイルスのスパイクタンパク質に対する抗体結合力を縦軸で示している。左は2回接種後21日目、右は3回接種後1月後のデータ。ブースター接種後はオミクロンに対する結合は他の変異と変わらないほど高くなっている。ワクチンはファイザーのものでwuhanのウイルスの遺伝情報に基づいて作られている。

 
昨夏の日本のデルタ感染の時は2回目のワクチン接種の速度とタイミングによって8月末から感染が収まったが、現在の3回目接種のスピードは遅いのでオミクロンの波が落ち着くには時間がかかるかだろう。
 

オミクロンに感染する人が多く出ると思われるが、その免疫がどれほど感染を防ぐうえで有効で、これだけ持続するかも関わってくる。さらに新たに生じる変異ウイルスに対してどれほど有効かも問題です。

希望的な予測としては4月になれば日本でも欧州でも一旦は感染が収まる。

これまで、感染の波ごとに新しい変異ウイルスが広がったが、つぎのウイルスが出てくるには少し時間があるだろう。

オミクロン用のワクチンがもうすぐできるというが、できたときには不要になっているかもしれない。それより、どのような変異にも有効なワクチンの開発が急務である。

2022年1月10日月曜日

弱毒化したオミクロンでパンデミックは終わるのか?

 「オミクロン変異は普通の風邪ウイルスになったので何も感染対策など要らない。むしろオミクロン感染を広げることがよい。インフルエンザより死亡率が低い。マスコミは感染者数を毎日報道して恐怖心を煽っているだけだ」という人々がいます。

国民の恐怖心が過剰であるのは同感ですが、問題は正しい感染対策が取られていないことです。感染者がいてもエアロゾル感染が起こらないようにする対策が必要です。換気が悪い空間でマスクをしないで長い時間発声する状況を作らないことが肝要です。今の問題は換気をすると寒くなることです。

オミクロンの感染は上気道だけに留まり肺炎をおこさなく、誰もが数日で回復して入院する必要がないのであれば朗報です。オミクロンが広がることでデルタが駆逐されるからです。ただ、重症化の可能性がどれほど減少したかが重要です。感染者の急上昇は医療的にも社会的にも影響が大きいので季節性のインフルエンザとは状況が異なります。


新型コロナは風邪ウイルスにすぎないとの主張は当初からありました。デルタまでについては完全に誤りでした。オミクロンについてはこのように断定するのはまだ早急です。

弱くなったことを示す実験データも複数報告されています。ハムスターなどの動物を使った実験に加えてヒトの肺組織を使った実験もあり、肺でのウイルス増殖が弱くなっています。もし、これらの結果が正しければよいのですがやはり人のデータが必要です。

オミクロンの弱毒化は、オミクロンの感染が早く始まった南アフリカと英国の状況に基づいています。実際、これらの国では、人々の病状は軽くて入院が必要な人は少ないです。しかし、それはワクチン接種や、デルタウイルスに感染して獲得した免疫の働きによるのかもしれません。英国では90%以上の人が抗体を持っていました。南アフリカはワクチンの接種率は低いですが感染した人はかなり多いと思われます。

オミクロンの感染者は20歳代などの若い世代が多いです。重症化するのは高齢で肥満、糖尿病などの持病がある方が多いことがわかっています。若い人は重症化しにくいです。しかし、日本のワクチン接種率が80%の手前で横ばいになっていますので接種していない12歳以下の子供たちの感染は危険です。
 

カナダで新生児、幼児の感染が報道されています。おそらく普通の風邪のコロナウイルスに感染したことがなく、その免疫が働かないので重症化するかもしれません。ニューヨークでも12歳以下の子供の入院数が増加していると報告されています。日本では子供へのワクチン接種が行われていません。


死亡者が出てくるのはもうしばらく経ってからですから1月末のデータを見る必要があります。先日、南アフリカ、英国で死亡者が上昇しているというデータが出てきました。



パンデミックは今年で終わると述べている人もいますが、これも希望的観測であって根拠がありません。新たな変異ウイルスは世界中ですでに生じていてオミクロンに取って変わる機会を狙っています。例えば、デルタとオミクロンの同時感染によって両者のハイブリッドが生じています*。オミクロンが生じた想定外の系譜をみると、どのような変異が今後起こるかは予測できません。感染者が増えるほど変異の数が増えて行きます。

*これは遺伝子配列を決定する操作でのエラーによると思われ、データが削除された。2022.1.13



omicronはデルタなどの系譜からでなく初期のウイルスから派生している