2017年4月30日日曜日

ドイツで演習に参加する


今回の旅の前半の目的は、Leibniz Institute of Neurobiology (LIN)で行なわれる、「Selfとは何か」という演習に参加することでした。参加者は、学部生、院生に加えてポスドクやスタッフもいて12人ほどです。研究所で実験をしている人もいれば、「哲学と自然科学」という境界領域専攻の学生もいます。講師はスペイン在住のイギリス人の翻訳家、著作家のRupert Glasgowで、どこの大学にも属さない謂わばフリーランスの学者です。使用言語は英語ですが、彼は、ドイツ語、フランス語、スペイン語に堪能です。そのような文系の方が、生物のことを幅広く勉強して、最近、このテーマで博士号を取得し、それが2冊の書物になるそうです。博士論文の審査員は、理系の教授と哲学の教授たちでした。彼がいかに型にはまっていないユニークな自由人であるかがわかります。 おそらく、日本ではこのように博士号を取得するのは無理でしょう。

海外で演習形式の授業に受講生の立場で参加するのは初めての経験でした。多数の個別のテーマについて参考論文が事前に送られていて、テーマごとに話し合いが行われます。ウイルスにSelfはあるか?免疫における自己と非自己、利己的な遺伝子、延長された自己とかです。

自由な発想で考えることがポイントだと思いました。全員が発言して、議論が絡み合いながらどんどん進んでゆく。同じ土俵の上で皆が発言している。講師が喋っているのは3分の1ほど。演習に遅れてきても早退してもまったく気後れすることがない。午前は9時から12時まで、メンザで一緒に昼食を食べて、休息してから2時から5時までという4日間のスケジュールである。現役の教官の時に参加するのはとても無理だった。


もしこの演習を日本で行ったらどうかな?といつも考えていた。というか日本では、なぜ同じようにできないのかと考えていた。私は、どのような規模の講義でも、意見、質問を求めるようにしてきました。しかし発言者が多くて困るということはなかった。このテーマだと、そんなことは考えたことがないから意見をだせないという反応が出てくることが予想できます。ところが、こちらの学生は長々と自論を話します。少々論点が違っていても気にしない。日本ではそのよう積極的に発言できる人はいるが、少数である。 
 

2017年4月28日金曜日

Berlin

ペンションがある建物のの入り口
今回のドイツ行きがパリ便になったのはフランクフルト着の便は安いチケットがなかったからである。1日余裕ができたのでベルリンに寄ることにした。JALパリ便の新しい機体は快適だった。オーバーブッキングのためにアップグレードしてもらったプレミアムエコノミーのヘッドフォンはノイズキャンセリングで、窓は電子式の色フィルター、トイレはウオッシュレットとなっていた。機内ではついこの間に観た「この世界の片隅に」を再び。2回観ると見逃していたところも見えてきてよかった。次「LION/ライオン 〜25年目のただいま〜」。5歳の時にインドで迷子になってオーストラリアで養子となった人が大人になって、google earthでインド住んでいた家を探し出すという実話による映画だった。インドの風景が懐かしかった。インドでは年間8万人の子供が孤児になるという。

シャルル・ドゴール空港、入国審査が長蛇の列で40分ほどを要した。これはパリで初めて。ターミナル1に移動して、ルフトハンザのカウンターでチェックインしようとしたら、germanwingだと言われる。確かにe-ticketをよく見るとgermanwingの文字があった!ルフトハンザのサイトで予約したのにフライトはgermanwingで発券はeurowingだった。ANAのサイトでPeachのチケットを買うようなことになっているようだ。食事は出ないだろうと思っていたが、小さなサンドイッチが出た。


Germanwingは2年前に副操縦士の自殺行為で飛行機を墜落させた航空会社なので、それと知っていたら乗らなかったかもしれない。チェクインも時間がかかり、さらに搭乗口が狭くて半数以上の人が立っているというのも格安航空だからということか。乗り継ぎの時間の余裕をとっておいてよかった。  

朝食!パンがたくさん!ハム、チーズのお皿の真ん中には食用ホウズキ
ヨーグルト、果物、シリアル
夜10時過ぎ。ベルリンのテゲール空港から乗ったタクシーの運転手がとても親切な方で、ずっと世間話をしていて(奥さんはポーランド人で子供は3人とかいろいろ,,,、着いたら荷物を持って宿泊するペンションに入るのを手伝ってくれた。建物の呼び鈴を押してドアのロックを外してもらってエレベータで3階に行ってという手順だった。一人だったら少し迷ったにちがいない。 

宿泊したのはホテルではなくペンションで古い建物だった。おじさんが出てきて、3本の鍵の使い方などを丁寧に説明してくれた。バスルームは共用だったが綺麗で問題なかった。時差ぼけで断片的な睡眠だった。朝食の部屋は古風でとても雰囲気がよい。食事の準備をしてくれるおばさんはとてもやさしい。15部屋ほどがあるようだ

ホロコーストを現したオブジェ

朝から雨。Google mapを頼りに地下鉄で移動し10時にユダヤ博物館に入る。ダニエル・リベスキンドという「建築しない建築家」の設計案が初めて採用されたという建物でとても斬新で理論的だった。日本語の音声がガイドを借りて回る。音声ガイドの項目が100以上あって、和訳もよくて詳細な説明が聴ける。




ヨーロッパでのユダヤ人の長い歴史を学ぶ。ユダヤ人に対する迫害は十字軍の時代から、ペストの時もあったこと、複雑な宗教、社会政治事情を詳しく学ぶことができた。多くの人たちが来ていて、学校の生徒たちも集団で説明を聴いている姿が印象的だった。歴史を学ぶことができる博物館である。このような博物館を建てるドイツはすごい。10時に入ったが出てきたのは2時過ぎだった。ペンションの近くにもどって、白ビールで一息入れて、一仕事をする。論文の査読をしなければならなかった。 

後部にはパイプオルガン 演奏もあった



 

夕方にペンションに戻り、周囲を散策しKaiser-Wilhelm記念教会でのコンサートに行った。隣の古い教会は戦争の時に破壊されたままで残っている。新しい教会は、全面が小さなステンドグラスの窓になっていて、正面に金色の大きなイエス像が掛かっている現代的で美しい教会だった。ベルリンフィルのメンバーによる演奏で、観光客向けのプログラムだったが美しいバイオリンの演奏と独唱だった。



コンサートの後で夕食の場所を探し、とてもよいドイツ料理の店を見つけて、ビールとアイスバインで夕食にした。メインの通りから入った場所という選択がよかった。