2022年7月26日火曜日

マスクをすると新型コロナ感染が拡大する??

ネットのコロナ関連のニュースにはとんでもないことが書かれていることが多い。

欧米ではマスクをする人がほとんどいなくなったのに、日本はみんなマスクをしているのに感染者が増えていることから公衆衛生に詳しい医師が考えたという。

「隙間のあるマスクをしている人は逆にエアロゾルを多く排出している可能性がある」  

「マスクをすることで呼吸器系の鼻腔、口腔、肺内、気道の温度が上昇し、排出されるエアロゾル量が増え、より感染が拡大しやすくなっているのではないか」

両者とも科学的根拠が全くない思いつきでしかない。このような記事をのせる記者もこの思いつきを疑うことをしない。

残念ながら、マスクに感染予防の効果がないという方は少なくない。

 

コロナの感染状況は国によって多くのことが異なります。何回も異なる変異ウイルスによる感染の波を経ると、人々がある時点で有している免疫も国により異なります。欧米でマスクをしていないのを見て、日本でもと考えるのは単純すぎるのです。

換気が悪く、人が密集している場所ではマスクの着用によって感染を防ぐことができます。特に夏は冷房を行うので多くの場所で換気がされていません。室外ではほとんど必要がないでしょう。

査読読前の米国の研究者の論文によると、1732人を調べた結果、マスクをしていて感染したのは7%、マスクをしていなくて感染したのは52%であったという。マスクの効果を調べた論文は数多くあります。

2022年7月21日木曜日

エアロゾル中のSARS-CoV-2の感染力はすぐになくなる

SARS-CoV-2の感染者が息をしたり喋ったりするときに排出されるウイルスを含んだエアロゾルを吸い込むことによって感染が起こります。一定量以上のウイルスを吸い込まないと感染が成立しないでしょう。

呼気のエアロゾルの量、および含まれているウイルス濃度は、個人によって100倍以上の違いがあることが知られています。したがって、 感染してエアロゾル量が多い人(スーパースプレッダー)が隣にいるかどうかがポイントになります。

エアロゾルの中のウイルスは、空気中でどのだけの時間、感染力を保っているのでしょうか?

これまでは、空気中で1ー2時間感染力を有しているという報告がありました(回転ドラムを用いた実験による)。したがって、感染者が滞在していた換気が悪い部屋に入ると感染することがあると考えられてきました。
 

より自然状態に近い実験方法を用いて秒単位で調べた結果、エアロゾル中のSARS-CoV-2の感染力はそれほど長くは保たれないことがわかりました。これが正しいならば、私たちが感染を防ぐために注意すべきことがより明確になります。


相対湿度45%未満では、液滴粒子の風解(efflorescence)とよばれる現象により、水分が無くなることで1分以内に感染性がなくなる。

相対湿度90%では液滴
粒子は水分を保ち、ウイルスの安定性は最初の2分間は維持されるが、それ以降は低下し、10分後には10%の感染性しか残らない。液滴内の塩濃度、pHなどが感染力の低下に関係しているようです。ウイルスの変異によってこれらの結果は変わらないという。

感染者から排出されたエアロゾルを数分以内にごく近くにいた人が吸い込むことによって感染が起こると考えられます。湿度が高い環境ではその時間と距離が少し長くなるでしょう。夏の湿度が高い日本と湿度が低い欧米では感染力の低下の時間はかなり違うでしょう。

この結果から考えると、いわゆるソーシャルディスタンスをとることはとても重要です。感染者から離れているほど空気中を移動してくるウイルスが感染力を失ってくるからです。

換気とKF94などのマスクをすること、CO2モニターで換気状態を監視することが要の感染対策です。

2022年7月6日水曜日

勉強不足の専門家が無視しているコロナ後遺症 Long COVID

ここ数日のコロナ感染者数の増加が急激です。8月にピークになるとの予測があったのですが、7月中にピークとなりそうです。感染者が急増するのを防がないといけません。冷房により室内の換気が悪くなることが一番心配です。換気をすると冷房の効果がなくなりますが。

 

「 オミクロンBA.5による感染者数がどれだけ増加しても、入院が必要な重症者や死者が低く抑えられていれば問題はない」という専門家の意見がありました。

オミクロンBA.5に感染しても全員が元通りに快復できればその見方は正しいです。実際、感染した人の半数以上はそうなります。しかし、そうだった人が「コロナは普通の風邪より楽だった」と言ったとしても、それはすべての人に当てはまるわけではありません。

「しかし感染すると軽症であっても後遺症がある場合があるので感染しないように対策をする必要があります」 を付け加える必要があります。

残念ながら、これまで紹介してきたように、このウイルスは体内の様々な所で後遺症を残します。糖尿病、心臓病、骨粗鬆症、アルツハイマー、認知症など多様です。後遺症は感染した人の一部であり、それがわかるのは、感染してからしばらくしてからです。

 

 「少なくても若年者の感染者の症状を見る限り、すでにかぜレベルに近い 」

「BA・5の感染力は従来の派生型と大差なく、第7波をつくることはない。ワクチン接種や治療薬なども出そろい、『ウィズコロナ』の準備ができている。」

この発言は、専門家の肩書きがある二人が述べたもので、新聞にも載っていました。この二人も冒頭の発言の人と同じく、研究論文を読んで勉強していないことがわかります。

BA.5の感染力がこれまでのタイプと大差がないという報告、研究論文があるのだろうか。大差なければ増えないはずです。現行のワクチンによる免疫、以前の変異ウイルスに自然感染した免疫は、BA.5に対しては防御が低下しているという複数の論文も読んでいないようです。

このように誤った発言を掲載する報道に係る人も問題です。科学的な考え方ができるマスコミ関係者はこの国では稀にしかいません。

2022年7月4日月曜日

コロナと骨  COVID-19 can cause bone loss

新型コロナによる自粛で人々が運動不足になり骨粗鬆症の人が増えると言われています。ところが、これまでの複数の研究によりコロナ感染により骨量が減少することがわかってきました。研究はマウスやハムスターを用いて行われています。治療に用いられるステロイドによっても骨の減少が起こりますが、コロナウイルスの感染が骨に影響を与えているのです。

 破骨細胞(骨を破壊し再吸収する細胞)が増加しているという報告があります。コロナ感染により引き起こされる体内の炎症シグナルであるサイトカインが骨代謝の制御を乱すようです。軽度、無症候感染のマウスでも観察されています。

コロナによって骨粗鬆症の人が増加することになります。コロナの後遺症は体内のあらゆる場所で起こっています。新型コロナは、肺炎のウイルス、風邪のウイルスというは完全に誤りです。

日本ではコロナに感染した人は割合はとても低いのですが、ほとんどの人がコロナに感染している国では、さまざまな健康被害がこれから問題になってゆくのは確かでしょう。

2022年7月1日金曜日

第7波 Omicron BA.5 (22B)

 

上のグラフはオミクロンの変異ウイルスが日本でどのように置き換わってきたかを示しています。今年の2月はBA.1(緑)がメインでしたが、BA.2(紫)に置き換わった。そして今、BA.5(水色)が増え始めています。BA.1/BA.2と同じ速度で置き換わるとすると8月にはBA.5がメインになっているでしょう。BA.5で深刻な問題は、ワクチンの免疫による防御が弱くなっていることです。そのため感染者が急増する可能性があります。重症化の程度はBA.1/BA.2と変わらないと意見と、強いという意見があり安心はできません。感染者の総数によっても違うでしょう。

 

新型コロナウイルス(SARS-Cov-1) がどのように進化してきたかの系統図。一番右上の朱色の丸がBA.4, BA.5を示します。このように変異を繰り返して進化しているので、今後、どのような変異が出てくるのは予測できません。人間が感染を広めるほど変異が多くなってゆきます。コロナウイルスを長期間に渡って体内に保持している例が見つかっており、その場合、変異のチャンスが増すことになります。一人の人の体内でも変異が起こるので、多様な(免疫を回避する)変異ウイルスが生じる可能性があります。

世界中でどの種類の変異ウイルスの感染が広がっているかの地図。米国でのBA.4, BA.5の割合が多い。

このようなリアルタイムのデータは、ウイルスの遺伝情報の解読によって得られています。今から20年は、このように早く知ることができなかったデータです。

出典

nextstrain

GISAI による

BAは何の略号なのと訊かれました。通し番号です。

ウイルスは変異を繰り返しているので、新しい変異が見つかると分類するために
 A to Zで命名します。Zまで行くと次は、AA to AZ, BA to BZです。BAが感染力が強く感染を広げて、BA1から始まって、BA2、BA4とBA5変異したわけです。数字はBA.2.75のようにも追加されて行きます。

デルタまでは大きく変異した新たな変異ウイルスが新しい感染を引き起こしてきたのですが、オミクロンの場合は、オミクロンから派生した変異が感染を引き起こすことができるという別の戦略が出てきたわけです。人間の免疫から逃避する方向に進化しています。