2012年4月19日木曜日

豊かな時間の流れ

3月末にパリとミュンヘンに出かけた折に、パリ郊外にある知人のご両親の実家に週末お邪魔した。RER Aの終点の手前の駅から歩いて15分ほどである。終点は私が好きなsaint-germain-en-layeである。
セーヌ川に接したこの地域は歴史的にもおもしろい。その昔、バイキングがやってきて両岸の家々を破壊し尽くしたという。セーヌを遡ってこんなところまで来ていたとは。革命の時にはナポレオンの妻のジョゼフィーヌが疎開していた場所が残っている。昔ここの市長は農学の出であったので、この地域を野菜の生産地にしてニンジン町と言われていた。その後、ここには画家、小説家などが集まって来て住んでいたという。モネ、シスレーがここの岸辺を描いた絵がある。ノルマンディー様式の多くの住居が立ち並んでいて優雅な町並みが続いている。

家の周囲の建物はもとは一人の金持ちが所有し別荘にしていたところを個人が普通の住居にした。築100年以上の建物を改造して住んでいる。同じ通りの近所の人がとても仲が良く私も隣のおばさんとも英語で話をした。100人ほどの家族の皆で集まってパーティをするのだという。

土曜日の朝、近くのマルシェを1時間以上かけて回る。お店の人に質問したり解説を聞きながら色々と学ぶことができた。変わったリンゴとオレンジを買った。蜂蜜と白アスパラガスも。近くのチーズ専門店に行って種類ごとに希望を言ってdiscussionしながら6種類のチーズを買うことができた。こんな贅沢な買い方は手助け無しでは不可能である。

3種類のチーズはA.O.C.マークがついていた。これは、原産地呼称統制(品質保証認証マーク)の意味で、伝統的な製法を守って作られた食製品にだけ認められる。例えば、カマンベールは日本でよく知られているが、フランスでA.O.C.のマークを持っているカマンベールcamembertde normandieだけ。無殺菌乳を用いており熟成の進行によって味と匂いが変化してゆきます。缶でパックして売っている日本のカマンベールは殺菌していて熟成しない。

家に戻りランチ。まず買ってきたホワイトアスパラをビネガー、マスタードなどで作ったソースでいただく。サラダの後にチーズ、最後にパスタ。もちろん赤ワインをいただきながら。庭のテラスに出てデザートとコーヒー!優雅で満ち足りた時間だった。

豊かさとは何だろうと考えさせられた。古いものを大切に使い、地域性を重んじた食材をシンプルに料理してゆっくりと食事をする。それだけで豊かな時間が過ごせる。日本にいてそのようにシンプルな時を過ごすことはまれである。