2015年1月28日水曜日

ショウジョウバエは美味しい食べ物の種類を匂いと味で区別して覚えることができる



Learning the specific quality of taste reinforcement in larval Drosophila

Michael Schleyer, Daisuke Miura, Teiichi Tanimura, Bertram Gerber


概要
ドイツ共和国のライプニッツ研究所のGerber教授との共同研究によって、昆虫の学習能力がこれまで考えられていたように単純でなく、報酬の「質」を区別して学習できるほど高度であることを明らかにした。昆虫には、人間と同様、学習能力があることがわかっている。しかし、覚えることができるのは「良い・悪い」だけであるとされてきた。今回の研究によってショウジョウバエの幼虫は良い悪いの「種類」を区別して学習し行動できることがわかった。この研究成果は電子ジャーナルeLifeで発表された。


背景
学習能力は動物が適切な行動をするのに重要である。食物を例にあげると、甘い糖溶液に匂いがついていることを何回か経験すると、その匂いを嗅いだだけで甘いものを期待して行動するようになる。逆に匂いと苦い溶液を経験させると、その匂いを避けるようになる。このような学習能力によって、昆虫は「よいもの」と「危険なもの」に対して適切な行動できる。


内容
ショウジョウバエの幼虫に、糖と匂いの組み合わせを学習させた後に、匂いだけを与えると、糖と組み合わせた匂いに寄るという行動を示す。ところが、糖がある状態でその匂いがあると匂いには集まらない。糖があるところでは、匂いの方に行く行動は意味がないからである。つまり状況に応じて行動を選択できる。
ショウジョウバエの幼虫はアミノ酸の味がわかる。そこで、糖で学習させたハエをアミノ酸のひとつであるアスパラギン酸の元で匂いのテストをすると匂いに集まった。つまり、ショウジョウバエの幼虫はアミノ酸と糖の味を区別して記憶していたことがわかる。
嫌いな苦味物質キニーネと高濃度の食塩を用いて同様の実験を行った。この場合は、匂いのテストの時に学習した物質があるときだけ、覚えた匂いを避ける行動をする。するとショウジョウバエの幼虫は、苦味物質キニーネと高濃度の食塩を区別して行動できることがわかった。


今後の展開
ショウジョウバエの幼虫の脳細胞の数は1万個ほどでしかないが、このような高度の行動選択ができるのである。昆虫の「こころ」は意外と複雑であり、虫には高度な学習能力があるかもしれない。


補足:今年度は大学内で責任ある務めを仰せつかったため、これまで更新する時間がありませんでした。まだ、多忙な日々が続いていますが、務めの中で人間や組織について多くのことを学んでいます。