2021年10月13日水曜日

ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団

オランダのロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団(RCO)の創立125周年を記念して2013年にワールドツアーを行った時の記録映画がとてもあたたかく、感動的だった。

ブエノス・アイレス、ヨハネスブルク、ペテルスブルクを演奏旅行したときの映像であるが、どの都市でもクラシック音楽を愛する人々のドラマがあった。

ブエノス・アイレスでは、コンサートに来ることができなかったチョコレートショップの店員のために二人の団員が店で演奏をするシーンがあった。音楽が癒しであると話をしたタクシードライバーの方も印象的だった。ヨハネスブルクでは
黒人の教師にバイオリンを習う子供たちがいた。団員が普段着で演奏したコンサートは楽しいものだった。

演奏ホールにひとりの団員がいて語るシーンもよかった。コントラバス奏者が楽団に入って初めて演奏したショスタコーヴィッチの交響曲10番について旋律を演奏しながら語った。コントラバスが奏でるこの曲の不気味な旋律には、スターリンの圧政下で怯えて、いつでも逃げられるようにスーツケースを準備していたショスタコーヴィッチの体験が込められていると、
芸術は権力に勝つのだと話をした。

ペテルスブルク公演では、マーラーの交響曲2番「復活」が演奏されたが、一人の年配の男性へのインタビューがまずあった。昔、彼の祖母はマーラー自身が指揮したペテルブルクでの演奏を聴いてマーラーのファンになったという。彼がまだ子供だったスターリンの時代、夜中の2時に踏み込んできた秘密警察に彼の父親が連行された。彼はカザフスタンのスターリンの強制収容所に送られ、その後、15歳のときに、ドイツのハルツ山地の近くのヒトラーの強制収容所に移されたが、生還した人だった。亡命生活の後に祖国に戻り、祖母が愛したマーラーの「千人の交響曲(第8番)」を聴いて胸が震えたという。彼は最愛の奧さんと52年連れ添ったが「私一人が残された、つらいね、だがそれが私の人生」だと語った。

その方が「復活」が演奏されたホールの席にいて、曲が最高の盛り上がりをもって終わったとき彼の頬には一筋の涙が流れていた。

音楽は慰めと生きる喜びをわたしたちに与えてくれる。

 

ペテルスブルグ エルミタージュ美術館の前の宮殿広場  


コロナで旅行にもコンサートにも行けない日々、わたしはベルリンフィルのdigital concert hallで励まされていた。

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