2022年6月29日水曜日

Joan Miró ミロ

Blue II

いつだったか、パリのリサのおうちのポンピドゥセンターで開催されていたミロ展に行ったことを思い出した。その時のテーマはBlue I, II, III.だった。

 

名古屋の栄のホテルからバス乗り場に歩いて行く途中に愛知県美術館がある。美術館はビルの10階で、コンサートホールもある高層のビルは愛知芸術文化センターという。

 2022.06.25 ミロ展が開催されているのを知って福岡に戻る日に訪れた。ホテルのチェックアウトの時間からフライトの時間まで2時間の余裕があったのが幸運だった。

ミロ展はミロの日本の芸術文化への憧れがテーマであり、名古屋の次は富山で開催される。福岡には来ない。なぜ富山かといえば、ミロとも親しかった瀧口修造の故郷であるからだろう。富山美術館のキュレーターがこの企画に関わっていたのではないかと思う。実際、富山美術館が出しているフライヤーがとてもきれいにできている。富山の入場料は名古屋よりはるかに安いのが羨ましい。

わたしがミロの抽象画に惹かれるのは、パウル・クレーに惹かれるのと共通の要素がある。実際、展示されていたミロの動物の絵はパウル・クレーが描いていたものと似ていた。

展示されていたミロの言葉で「わたしは詩と絵を区別しない」とあった。ミロの絵は詩でもある。絵に詩の文字も書いているし、俳句に絵を添えている。絵から詩を読み取ることもできる。特に私が好きなのは何も描かれていない色が塗られた広い空白。パリで出会って以来、Blue IIの青の上に描かれた赤い線と黒い点は何を象徴しているのだろうかと思い続けている。黒の点によって青にできた余白が訴えてくる。

2022年6月27日月曜日

スーパースプレッダーが感染源となる

感染者60人を14日間、毎日鼻腔と唾液をサンプリングしてPCRでウイルス量を調べた研究があります。

横軸がウイルス量、縦軸が人数を示します。

感染者によって排出されるウイルス量にかなりの違いがあることがわかります。60人中の6人ほどがスーパースプレッダーに当たるかも知れません。一方、30名ほどの人からはほとんど感染が起こらないのではないかと推測されます。


コロナによる脳後遺症の大規模調査 デンマーク

コロナ後遺症について知るには感染の波が終わって半年以上が経過してから、感染した人と感染しなかった人を比較した大規模調査が必要です。今回、デンマークの結果が発表されました。

2020年2月から2021年11月までのデンマークにおける入院患者および外来患者を調べたものです。ウイルスはアルファからデルタ変異だと推定されます。

コロナの検査を受けた919,731人のうち、感染者では、アルツハイマー病と診断されるリスクが3.5倍、パーキンソン病が2.6倍、脳梗塞が2.7倍、脳内出血が4.8倍でした。コロナウイルスは脳に多面的に影響を残していることがわかります。

後遺症で知りたいことは、ワクチン接種が後遺症の発病に有効かどうかと、オミクロンによる後遺症はデルタなどによる後遺症と違いがあるかです。デンマークでは多くの人が2021年の秋に2回目のワクチン接種を終えていた状況だったので、ワクチンの効果についてはわかりません。オミクロンについては、あと半年結果を待つ必要があります。

2022年6月13日月曜日

「らじゃ」は英語


人名のRogerを米国人が喋るのを聞くと、ロジャーでなくラジャのように聞こえます。それが了解の意味で使われている。これは、無線の通信用語で、受け取りましたの
receivedが聞きとりにくいので、"R"だよというときに使うRogerをそのまま使うようになったわけです。received→R→Roger

そこで思い出しました。

その昔、国際線の飛行機で旅行する時、リコンファーム予約再確認が必要だった。目的地に着いて、帰国便をリコンファームする。ちゃんと乗りますよと席を確保してもらうのだが、なんでそんな面倒なことをしていたのか不明です。航空会社に電話してリコンファームしたいと告げてフライトと名前を言うが、ある時、名前がないと言われたことがある。TanimuraをDanimuraと聞き間違えられたのだ。それがわかって、Tiger’s “T”と言わなきゃ!とアドバイスされたことを鮮明に覚えている。それはアメリカのニューヘブンでだった。

 すべてのアルファベットについてよく使われる単語が決まっている(Spelling alphabet)。 

今ではリコンファームはなくなったと思っていたら、まだ必要な航空会社がありました。

2022年6月12日日曜日

適切なコロナの感染対策は何なのか?




このグラフは第1波以来の日本の死亡者の日毎の実数です。第1、第2波での死亡者がいかに少なかったかがわかります。オミクロンが現れた時、この変異ウイルスは弱毒化していると巷では言われていました。ところが第6波の死亡者が飛び抜けて一番多かったのです。昨年の秋にはワクチン接種の2回の接種が全人口の80%ほど終わっていたのにこれだけの死亡者が出たのはオムクロンは3回接種しないと抗体レベルが上がらないからでしょう。



このグラフは、昨年の1月からの人口あたりの感染者数のニュージーランドと台湾と日本のデータです。ニュージーランドと台湾はコロナ対策の優等生と言われていました。島国であるため、厳しい入国制限でこれまで感染を完全に抑えてきたはずです。ところが、対策を緩めた結果がこれです。

人口あたりの感染者数の累積曲線です。ニュージーランドと台湾の人口比感染数が日本を上回っています。韓国も6月から急激に増えました。欧州では、フランス、英国、ドイツ、スウェーデンの順番です。厳重な感染対策を行わずに集団免疫を目指しているとマスコミ上で批判されたスウェーデンの死亡者累計はそれほど多くありません。ロックダウンをした英国と比べても少ないです。

このようなデータを見ると、感染対策がいかに難しいかがわかります。国によって様々な条件が異なります。ある国で有効だった対策が他の国でも有効とはかぎりません。スウェーデンでは初めからマスクをほとんどしていませんでした。 人口密度によって人の接触の頻度が異なると予想されますが、スウェーデンの人口密度は日本の1/19ほどですから、マクスの効果は限定的かもしれません。

さて、これからどうなるのでしょうか?

 

まず必要なのは、何が有効な感染対策であるかをはっきりさせることです。過剰な怖れが引き金になって多くの意味がない対策が取られてきました。

例えば、感染拡大時にも大学の対面授業を行うにはどのような対策が必要かが考えられていたでしょうか。

先に紹介した、米国の大学のキャンパスの各所で空気をサンプリングしてウイルスの量を調べた研究、学内でのすべての感染者のウイルスの遺伝子配列を調べて、誰から誰に感染していたのかを調べた研究などは有効な感染対策を考える上で参考になるでしょう。

希望は、感染の予防効果があるワクチン、どのような変異ウイルスにも効果があるワクチンが開発されることです。来年に接種できることを期待したいです。

不安材料は後遺症です。後遺症はしばらく経過しないと実態がわかりません。

2022年6月9日木曜日

研究費の選択と集中の配分で大学はよくならない

文科省は新しい言葉を巧みに用いて大学を競走させてレベルアップしようとしている。 例えば2014年から始まったスーパーグローバル大学事業がある。ひとつに、講義を英語で行うという目標があるが、同じ内容でも英語だと学生の理解度が落ちることは明らかである。大学の世界ランキングを上げるのが目標だったが無理だ。

資金運用で儲けた巨額の資金を大学に投入すれば数年で成果が出て、特許が取れて金儲けができると政府の人は思っている。そのような応用志向の研究分野はあるが大学の理系分野のすべてがそうではない。応用研究は工学部の領域だろう。しかし、理学部の多くの研究は基礎研究であり、応用研究とは異なる方針で行われている。

理学部の生物にいた現役時代、私は、世界中でだれもやっていない独創的な研究を目指していた。研究は少額の研究費があれば一人ででもできる。成果が世の中で役に立つかどうかなどは考えなく、ただ、おもしろい着眼点による研究を志していた。研究の半数ほどは何も結果がでなくて諦めたが、数年経って新たなひらめきから新たに研究が進んだものもある。

研究費を申請する際に、その研究がどのような社会的意義があるのかを書く欄ができた。意義がありそうに読めるような文章をを書かざるをえない。

現役時代に業績評価が重視され、細々とした情報の入力を強制された。その中で納得できなかったことがある。5ヶ年計画を立ててそれがどれだけ達成されたかを自己評価する欄である。画期的な研究は突然のひらめき、思いつき始まるものである。しかし当初計画にない研究は評価されないのだという。 

どうすれば日本の教育、研究を変えることができるのか?教育に対する国の財政支出があまりにも少ない。見返りを求めない下支えが必要だと思う。教育に携わる人を増やして経済的に支えることだ。


 

2022年6月3日金曜日

読書日記「南島に輝く女王 三輪ヒデ」


   倉沢愛子著「南島に輝く女王 三輪ヒデ」国のない女の一代記 岩波書店 2021


倉沢愛子さんはインドネシア現代史の研究者。インドネシアの文書館に整理もされずに埋もれていた一通の手紙を読んで、そこから一人の日本人女性の生き方を15年の調査を元にして掘り起こして書いた伝記です。その手紙に気がつかなったなら、この本は書かれなかっただろう。末娘の方がインドネシアでご健在で著者は何十回も足を運び、国内外を旅して調べた。

昔、函館は横浜と同じように世界と繋がっていた。1860年に建てられた函館ハリストス正教会からもわかるように、函館はロシアとの結びつきがある。

函館でロシアから亡命してきた貴族出身の男性と結婚した三輪ヒデはオランダ領東インド(インドネシア)に移住し農園を経営し9人の子供を産んだ。ところが、太平洋戦争が始まり日本軍がオランダを追いやって東インド全域を軍政下に置いた。しかし、日本が敗戦するとインドネシアの独立戦争が起こる。日本、オランダ、インドネシアの複雑な歴史に翻弄されて9人の子供たちは世界に散らばった。三輪ヒデはオランダから米国に渡るが最後はインドネシアで骨をうずめた。反乱万丈の一生だった。ロシア人の夫とは離婚をするが、無国籍の夫はインドネシアを一度も離れなかった。

三輪ヒデの差別や迫害をも乗り越えた生きざまは実に逞しい。一通の手紙からすばらしい物語を導き出した著者に感謝したい。


コロナ接触感染の可能性は極めて低い

新型コロナはエアロゾルによる空気感染がメインで接触感染はほとんど問題ではないことをブログで何回も書いてきました。そのことを支持する多くの研究論文は数多くありましたが、実際の生活環境でウイルスの量を定量分析した今回の論文は初めての成果だと思います。

場所は米国の大学で、1年間、学内の多くの場所とバスで空気と表面からサンプリングしてウイルス(SARS-CoV-2)を分析しています。

256の空気サンプル、 517個の表面のサンプルを9ヶ月の間に得ています。ウイルスが含まれていたのはサンプルの1-2%ほどでした。ウイルスが一番多かったはジムです。一方、講義室、食堂、事務室、コーラス練習室、演劇ホールなどではウイルスが検出されませんでした。

感染モデルによって得られたデータを用いて感染の確率を計算したところ、接触感染が起こる可能性は10万分の1で、空気感染の1/1,000でした。接触感染は一本の指に付着したウイルスの全量が例えば鼻の粘膜に接触したと想定しています。空気感染は、ジムでは一定時間、運動を行う時に吸い込む空気量(マスクなし)からどれだけのウイルスを吸い込むかを計算しています。

空気の場合は、否応なしに体内に吸い込まれるが、接触の場合は、手についたウイルスが粘膜と接触しなければならないのでその可能性は高くはないと思われます。

このように空気中のウイルス量を調べるというアプローチは有効でしょう。ただ、局所的な空気の動きで感染が起こることは捉えることができません。



2022年6月1日水曜日

高齢で身体能力が低下することはよくわかる

労災で亡くなる方の中の高齢者の割合が増えているというニュースは、経済的な問題によって高齢者が危険は場所で働かざるを得ないという日本の貧困の現状を露わにしている。

年金支給開始が遅くなり、物価は上昇しており、危険な職場であっても非正規で働かざるを得ない。建築、製造で働く人が大部分だが、身体能力が低下していることを配慮した安全対策が講じられていないという。

比較にはならないが、フィンランドでは住宅手当もあり、毎月の最低年金限が保障されているそうだ。税金は高いが、皆が幸せに老後を暮らせるように設計されている。介護が必要になれば手当が支給される。