2020年11月11日水曜日

ドイツでの暗闇の夕食 適正な明るさについて

30年ほど前に初めてドイツに行った時のことを思い出した。研究所に有名な昆虫生理学者のラボを訪ねた。セミナーの後で、先生の自宅に招待されて先生自ら夕食を準備してくれた。先生は一人住まいだった。あなたは疲れているからソファで横になって休んでいなさいとオレンジジュースを出してくれた。

夕食が出来上がって二人で話をしながら食べ始めた。日が暮れて部屋がだんだんと暗くなっていくのに先生はなかなか照明を点けない。暗闇の中で二人で話していた。何を話していたかはもちろん覚えていないが、暗い部屋の中の情景ははっきり覚えている。高齢の著名な先生が日本から来た若造に夕食を手ずから準備してくれるなどという体験があったことは、いまでも信じられない。

海外で煌々と明るい家には日本人が住んでいると言われるそうだが、日本の夜、室内は明るい。海外では、スポットライトを用いた局所的な照明が一般的だ。それもタングステンの赤い光だ。それはホテルでも同じ。国際線の飛行機内の照明も日本のエアラインは明るい。生物学的には、夜は暗くなるほうが生物時計にとって好ましい。明るすぎると時計はまだ昼かと思ってしまうからである。そして夜更かしの生活になる。

 日本の夜の室内照明が明るくなったのは、戦後、経済成長が著しかったころではないだろうか。人々は明さが豊かさ象徴と誤解したのではないか。節電的にも、生物学的にも夜は暗い方が望ましいが、どのようにしてその変革が始まるのだろうか?



0 件のコメント: