2010年10月12日火曜日

ゴキブリを歩かせる

ある日、福岡の会社から電話があって映画撮影のためにゴキブリの出演を手伝うことになった。なぜ私に依頼があったのかは謎である(ハエ関係ではときどき連絡がある)が、おもしろそうなので引き受けた。でもこんなことを引き受ける研究者はあまりいないかも。福大のラボから10匹のワモンゴキブリをもらった。誠に幸運なことに新入りのAがゴキブリを素手で捕まえるのが平気(得意)であることがわかり助手に採用した。人は見かけによらない。

1週間前に祇園の事務所に出かけ予行練習をする。ホースから出して歩かせようとしたが、一度出演したごきさんは恐怖学習したのか、2度目はいやがってなかなかホースから出てこない。ホースの中を後ずさりしたりターンする。

11日祝日の昼前、本番の日、地下鉄七隈線の駅でayと待ち合わせ、指定されたアパートへ。城南線から細道を入ったところの庶民的なアパートの一室だった。カメラ担当が4名、監督と補助の数名に加えて、メイク担当が4名など総勢12名ほどがいた。

手作りのおにぎりの昼食をいただいてからいよいよ撮影開始。私がごきを放してAが回収するのを何十回と繰り返す。箱を伝わって胸に登り顔まで歩くというのが求められていたルートだったが、カメラの動きに合わせて動かせるなど不可能なので、2匹を時間をずらせて放す。予行練習の時とちがって、ごきさんもテンションがあがっていたのか出演拒否はしなかった。最後はほっぺの上からスタートを繰り返す。

主演男性はさすが度胸が決まっていて眼を開けたままビクともしない。途中、メイクが何回も入る。2時間以上の撮影で50カット以上を撮影して終わり、解放されてごきさんたちと帰途につく。手にはゴキブリの匂いがついたまま。慣れない仕事でかなりエネルギーを消耗しました。でもいちばん疲れたのはごきさんだっただろう。で、役目を終えた彼らのその後の運命はまだ決まっていない。

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