2020年12月17日木曜日

世界人権宣言

 高田博厚 著「分水嶺」を読んでいたら、彼が1931年に欧州へ船で旅する時に立ち寄った上海で、日本人は危ないから行ってはいけないと言われている中国人街へ行ったときの描写が数行あった。そこに、あまりにもあっさりと書いてある文章を読んで驚いた。

「街には子供市が出ており、3, 4歳ぐらいまでの男の子女の子が藁かごに入れられて、列んでいた。2, 30円で一人買える」

この書物は高田博厚が1970年頃に昔を回想して書いたものである。岩波の編集部の付記に「本書の本文中に、差別にかかわる表現があるが、本書が書かれた時代性や原著者が故人であることを考慮して、原文どおりとした。」とある。

差別にかかわる表現」は、この文章のことではないと思われるが、この文章は差別そのものの描写である。1970年頃に高田博厚この文章を書いた時に、それに対する彼の思いを書き足さなかったのはなぜかと思う。

 「分水嶺」の文章を読んでまさしく「時代性」について考えた。その頃に開催された世界万博で、少数民族の人間が生きた展示物になっていたことを思い出した。世界人権宣言が採択されたのは1950年である。長い人類の歴史の中で、すべての民族が人間として等しいと宣言されたのは、ごく最近にすぎない。そして子供の人身売買は今でも行われており、深刻な問題である。


 

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