2020年10月31日土曜日

BLM を理解するために  安岡章太郎「アメリカ感情旅行」

 BLM運動を理解するための本があるサイトで何冊か挙げられていて、1冊が岩波新書の安岡章太郎「アメリカ感情旅行」(1962年)だった。現在絶版だったが図書館で借りてきて読了した。作家の安岡章太郎が、1960年にロックフェラー財団の文化人奨学生としてテネシー州のナッシュビルに半年ほど滞在した見聞記である。

なぜ、彼がこの地を選んだかと言えば、南北戦争に敗北した激戦地で黒人差別の実情を見たいと思ったからだ。たいへん読み応えのある日記だった。この頃は、黒人は映画館に入ることができなく、レストラン、トイレも別だった。ちょうど、ケネディ大統領が就任したときだったが、彼の周囲にケネディを歓迎する雰囲気は皆無だったという。今の時代のBLM運動には米国建国以来の長い歴史的な流れがあることを考えさせられた。安岡は、日本人が米国でどのように受け取られるかにも注意しながら生活をしている点も興味深かった。

pp.180 「広島で原爆を使ったのは平和を早くもたらすためだ」というのは本気でそう考えているのかもしれない。

様々な体験を通しての著者が最終的に思ったのは、日本人も黒人も白人もすべて同じ人間であるということだった。ちなみに、私は研究活動として何度も米国に行っているが、出会った研究者に黒人は一人しかいなかった。その人もその後、アカデミアに残っていないと思う。大学や研究所の建物、ホテルで掃除などを担っているのは黒人だった。


 

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