2018年3月14日水曜日

自由書房と星の王子さま

私が高校生だった頃の息抜きのひとつは定期試験が終わった日の帰りに書店の自由書房に行くことだった。帰りといっても自由書房は通学路の途中にはなくて、遠く柳ヶ瀬にあって自転車で行っていた。今なら自転車で行こうとは思わない距離である。いろんな本を見るのが楽しみだった。入口を入ると上が四角に切り取られて吹き抜けになっている。切り取られた残りの部分には数メートルの2階部分があって本棚が並んでおり片側はレコードのコーナーになっている。高校2年の頃、発売されたばかりのSgt. Pepper's Lonely Hearts Club Bandを売り場でかけてもらった。高校生の内気な私が店のお姉さんにそんなリクエストをすることができたのは信じられないが、今でもジャズ喫茶で軽くリクエストできるのはその時の経験があるからかもしれない。ある時、レコード売り場の反対側のピロティの本棚で本を見ていた時に、男女がやってきて、女性が「あ、これ、星の王子さまを書いた人のだ!」といって「夜間飛行」の本を指差した。男性はまったく興味がないようだった。私は心の中で「そうですよ」と言った。あれから50年が経って、柳ヶ瀬のバス停の前に立った時、自由書房があった場所が更地になっていた。でも、その時の情景と、そこで過ごした自由な時間は鮮明に記憶している。サン=テグジュペリの「星の王子さま」は高校生の私とって希望であり救いだった。 
 

 

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