2012年2月17日金曜日

二度目の韓国

2度目の訪韓は一番寒い時期にあたってしまった。今回の旅の感想は「韓国の大学の研究環境は上昇中」である。これは昨年の3月の訪韓時にも感じたことであるが以下の3大学を訪問してその感を強くした。

Suwon  水原 Sungkyunkwan University
Daejeon  大田 KAIST
Gwangju 光州 Gwangju Institute of Science and Technology (GIST)

これまでは日本より遅れていると思われていた韓国がいろんな面で日本より進んでいると思った。例えば、シンポジウムを終えて会食に行ったが、個別研究費のクレジッドカードがあってそれで支払っていた。それどころか、院生たちだけの食事もその後のマッコリの二次会も研究経費で出してくれた。日本の大学では多くの場合、来客との接待費用はすべて個人の自己負担である。アメリカでは昔から研究費から会食代を支払っていたが、日本では今後も無理だろう。企業の接待費は膨大であるが、研究者が来客時に使う飲食費は頻度も少なく低額なのに。研究者が一緒に食事をするのは研究情報の交換がメインである。

今回は2名の院生を同行した韓国出張だった。一人は韓国に行くことにあまり魅力を感じていなかったが行ってみて考えが変わり、また良い刺激になったはず だ。特にKAISTでは院生同士がかなりの時間にわたって交流できたことがとても良かった。教官と一緒では、話題も異なるし、緊張して話ができなかっただろう。急なことだったのに院生が付き合ってくれた。KAISTでは講義も英語で行われており、院生の英語能力は高く研究者としての自覚もあり、日本人の院生と比べると差は歴然としている。

KAISTではラボマネジメントの話が印象的だった。廊下の培地用の冷蔵庫は業務用だったが、安いからというのが理由である。実験に使う小道具も安価で制作依頼して発注しているようだった。日本では特別注文で制作してもらうと膨大が金額がかかるが、韓国は人件費が安い上に技術力が高いと思った。光州のGISTでも海外のラボで使っていたmating chamberをコピーして制作したのを使っていた。GISTのラボはオープンスペースを自由に設計したため、ハエの飼育管理、行動実験の部屋が実に機能的に出来ていた。


大学国際宿舎
GISTの大学のゲストハウスに宿泊したが部屋は整っていた。日本で私は、基生研、遺伝研といくつかの大学の宿舎に泊まったことがあるがどこも最低レベルの部屋、貧弱な設備だ。GISTの宿舎は広さもありキッチンもついている。窓側には独立した洗濯物干しの小部屋まであった。また、ネット接続、テレビ、 冷蔵庫、インターフォンなどが完備し長期滞在も問題ないだろう。これまで宿泊した大学の宿舎で一番すばらしかったのはWürzburg大学である。シングルなのに広くて机がすごく大きくてキッチンも充実していた。それにスーパーがすぐ近くにあった。

今回訪問した3名のPIはすべて海外の一流ラボでのポストドク経験があり、同じ頃に韓国に帰ってきてラボを立ち上げたという互いに似た状況だ。皆が独立したPIである。彼らは頻繁に会って研究の話をしては飲み、そして皆が材料と情報を共有している。Waltonは、every single flyも共有していると言っていたが、その仲間意識はすばらしく、なによりも羨ましい。私も定期的に訪韓して加わりたいと思うほどだ。

大学以外ですばらしいと思ったのは、新幹線の中で無線LANが使えること、地下鉄にはホームドアが設置されていることなどだ。食事関係も衛生に気を配って いるようだった。また、レストランでの接客も良いと思った。福岡ー大阪往復ほどの距離の韓国新幹線の料金が4千円というのは信じられない。食事や交通費にかかる費用が日本よりはるかに安いのである。

すべて前菜(韓国の家屋を利用したレストラン、光州)
お皿が載った机が運ばれてきた

食についていえば、おかわりが自由な小皿料理システムはすごい。さらに、料理のバリエーションが多くてスープでさえも何種類も出てくるのは驚きだった。前菜の量もすごくて、メインデッシュが出てくるまえに満腹になってしまう。ただ、アルコール類は種類が少なく、焼酎も薄くて甘い。

日本と米英の科学基礎研究に勢いがなくなっている中で、中国、インド、韓国はどんどん伸びている。そのことを感じた旅だった。

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